目をひらくと空の青に彼が融けていた。海岸沿いの錆びの生えた柵に囲まれた無人駅。午後。梅雨はどこかへ脱走し、陽射しは単線を走るレールを二重の光線に変えていて、その行方は眩しさで見えない。プラットホームの真ん中で、白いワイシャツからうまくいかなかった仕事の記憶とネクタイを早退させて飲みかけのペットボトルに口をつけると僕の喉を青く潤す《ペプシしそ》。買うつもりはなかったけれど、駅前の酒屋の胸元の開いたワンピースを着て藤で出来た椅子に深く腰を掛けた推定未亡人が、足を組み替え組み換え、その薄く開いた唇からチロチロと線香花火のように赤い舌を蠢かせ、「ぺプシしそはいかが?プッシ〜ソはいかが?Pussy、そう、オーイエー…、そう、Pussy、so、Pussy、so…」と桃色吐息を浴びせられた結果、胸がキュルルンした僕は缶ビール六本パックと《ペプシしそ》を握りしめて太陽の真下、焼けた大地に立ち尽くしここに至