「私、増田阿野太郎は!恥ずかしながら!戻ってまいりました!」 暗い気持ちを誤魔化すために、久しぶりにあった両親の前で冗談めかしてそう答えた。つもりだった。 わずかな沈黙のあとで父親が「随分怖い喋り方になったな」と半笑いで応えてくれた。 母が怯えた目をしていたことに気づいた。 この半年の間に、人間から、遠ざかっていたのだ。 この物語はフィクションである。 嘘が多い。 私、増田阿野太郎が某実力組織への就職を決めたのは、大学を出て無職になった次の秋だった。 惰性で続けていた就活にもバイトにも嫌気がさしていた頃で、親の態度も少しずつ冷たくなっていた。 そんな頃に高校時代の友人に同窓会で勧められた。 曰く「パチンコばかりしている人間だらけの気楽な所だ」 曰く「お前は背も高いし意外と筋肉もあるから向いてる」 曰く「デスクワークもある」 なんとなくで、就職先を決めた。 試験はあっさり突破した。 簡単すぎ