過労死やうつを招く長時間労働やハラスメントは改善されたのか。ジェンダー平等や多様性の理念は生かされているのか。世代によって仕事観、労働観はどう違うのか。労働現場のメンタルヘルス事情に詳しい精神科産業医で、筑波大学教授の松崎一葉さんに聞いた。 日本型ハラスメントの特徴 ――職場のハラスメントの現状をどう見ていますか。 「私が重要だと思うのは、通報される件数よりも、本人が抱え込んでいる潜在的な事案のほうです。実際の通報者は、周囲の人間のケースが多く、本人からの通報の割合のほうが少ないのです」 ――なぜでしょうか。 「日本型ハラスメントは、仕事ができる上司が、若い部下を一人前に育てようと熱心に指導し、行きすぎて起きるケースが典型です。上司が部下のためによかれと思ってやっていること、指導の内容自体よりも、スタイルや方法に問題があることが特徴です」 「例えば、部下単独では契約がまとまらない。上司が『