今次の金融危機の経験は、(とくに米国の)経済学界にもいくつかの変化をもたらすものとなった。そのうちの1つは、第一級の経済学者が一般読者向けの経済書を書くことを必ずしも厭(いと)わなくなったことである。 従前は、一般読者向けの経済書を書くことは、専門的研究者にとって「害あって益なし」の作業だとみなされていた。というのは、かりに世間的に成功しても、むしろ専門家集団の中での評価を下げることにつながったからである。ミルトン・フリードマンがジョン・ケネス・ガルブレイスを真っ当な経済学者だとは認めず、ガルブレイスがアメリカ経済学会の会長に就任することに反対したことは、その有名な実例であるといえよう。 最近ロバート・シラーは、そうした事情を次のように述べている。 Until recently, many professional economists would be reluctant to writ
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