ふと思い立って、江國香織さんのエッセイを片端から読み返す。 恋愛や男の人についてのエピソードももちろんいいのだけれど、 わたしがとくに好きなのは、家族(両親と妹)の話と、身の回りのちょっとした「好きなもの」の話だ。 同い年、本好き、といった共通点のせいなのか、家族の中での会話も、読んでいる本も、食べているものも、 びっくりするほど似ている。 だから、さりげない思い出や日常のひとこまの中に、「妹」が登場すると(じつによく登場するのだ)、もうだめ。 どんなに楽しいことが書いてあっても、いや、楽しいことが書かれていればいるほど、 自分が妹と過ごした時間のあれこれを思い出し、そのことを、「ああだったね」「こうだったね」と言い合うことは、 もう二度とないのだと思うと、涙がとまらなくなる。 そもそも、江國香織さんの文章は、どんなに幸せな風景を描いていても、なんともいえず切ないのだ。 その幸せは、有限な