日本と欧州の発想の違い デジタルアイデンティティとその入れ物であるデジタルIDウォレットについて、当研究所所報第6号で取り上げた。当方の論文[i]では、欧州での法制の動きを技術仕様に踏み込んで紹介したところ、次のような質問を受けた。「日本ではマイナンバーカード機能をスマホに搭載する動きが進んでいるが、あれと同じようなものか?」。答えは「一見すると同じ機能のように見えるが、枠組みの発想法が異なるので別物」ということになろう。 論文のまとめでは、我が国の現状を、公的デジタルIDとしてマイナンバーカードの利用促進や機能拡張が進められてはいるが、デジタルIDウォレットのグランドデザインが存在していないと指摘した。この違いを理解するには、そもそもアイデンティティとは何かという定義から始めた方がよい。 アイデンティティとは、個人、組織、またはデバイス機器が一意に識別されるための情報や属性の集合体を指す
