私たちは、つい目の前の現実をそのまま受け止めてしまいます。 ところが、「今のダムを中心にした治水の考え方は、高度経済成長時代にできたもの」と松浦茂樹さんは言います。 土木技術や河川工学の進歩があって、洪水後にできた自然堤防や湖沼を利用するやり方から、 人工的な水利事業を興すように変わり、治水家の「目利き」は、いったんは不要になっていきます。 しかし、新たな治水家意識こそ、これからの地域を考えるキーワードになるかもしれません。 東洋大学国際地域学部国際地域学科教授 松浦 茂樹 (まつうら しげき)さん 1948年生まれ。1971年東京大学工学部土木工学科卒業後、同大学院修士課程を経て1973年建設省(当時)入省。土木研究所都市河川研究室長、近畿地方建設局淀川ダム統合管理事務所長、河川局水都調査官などを経て1999年より現職。 主な著書に、『明治の国土開発史ー近代土木技術の礎』(鹿島出版会19