そして、八咫烏(やたがらす)が先刻説明した内容とほぼ同じ内容を木花咲耶姫(このはなさくやひめ)は語った。ただ、農家の人々の窮状に対する思い入れなどを交えたものであった。それを聞いて、案山子(かかし)は深く同情した。それは木花咲耶姫が美人だからではない。案山子もそのような義心を持ち合わせているのである。 「いやな、わざわざ来たのは他でもない。きちんと話さねばならぬことがあってな。我々への願いは『豊作』か、それとも『台風の上陸阻止』か」 「その両方ではいけませんか」 少し潤んだ、美しい眼で見つめられると、『なんとかします』と言いそうになる。しかし。 「台風を避けるのは不可能だろうな。天災ゆえにな。八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)ならあるいは」 八意思兼命とは天気の神様だ。だが、台風をあやつれるとは案山子も聞いたことがなかった。 「では、八咫烏(やたがらす)殿、またお使い願いますか」 八
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