高校生の男女を主人公にした、不思議なひと夏のラブストーリー……と聞いたら、よくある青春アニメを連想するかもしれないが、「夏へのトンネル、さよならの出口」は、おそろしく精緻で、繊細で、しっかりと芯の通った映画である。過去の事故で人生に希望を失った男子高校生の塔野カオルは、同じように欠落を抱えた女子転校生・花城あんずと知り合う。2人はたまたま、「失ったものを取り戻すことができる」と噂される“ウラシマトンネル”を発見する。 とりたてて仲がいいわけでもないカオルとあんずは、それぞれ欲しいものを手に入れるために協力しあい、2人だけでウラシマトンネルを探索するのだが、同時に予想もしなかった事態に直面してしまう……。 「時をかける少女」「転校生」といった80年代の大林宣彦映画にも通じる、しっとりと切ない情感のフィルムに仕上がっている。「双星の陰陽師」(2016年)、「アクダマドライブ」(2020年)など