古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」 ランド研究所の報告書「中国との戦争」はもし米中戦争が起きた場合、その行方は日本の動きに大きく左右されると強調していた。その意味では日本は米中戦争のシナリオでは「決定的な要因」だともされていた。 同報告書はその日本の重要性について以下の具体的な諸点を記していた。 ・米中戦争の際にはアメリカの同盟国、友好国の動きはきわめて重要となるが、なかでも日本の役割は決定的となる。日本が参戦した場合、とくに2025年近くまでの時期に展開される「長期で激烈」な戦争では日本の動向が米中戦争の勝敗を左右するほどの重みを持つ。 ・米中戦争が長引けば長引くほど、日本の潜水艦、水上艦、戦闘機、ミサイル、情報・監視・偵察(ISR)の能力は米側にとって基本的な支援要因となる。日本はその種の広範な戦闘能力を今後、中期、長期に増強していくことが確実で
嶌信彦(ジャーナリスト) 「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」 トルコのエルドアン大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、中国の習近平主席――など、このところポピュリズム、大衆人気をバックにしながら強権政治をふるう人物が国際社会で目立っている。もしアメリカのトランプ氏が新大統領に当選したら、さらにその流れが強まるのだろうか。 トルコのエルドアン大統領は7月に軍の一部のクーデターを察知し未然に防いだ。この時、驚かせたのは市民たちが戦車の前に立ちはだかり阻止の一役を担ったことだ。エルドアン大統領はトルコの政治原則ともいわれる宗教色を持ち込まない世俗主義(アタチュルク原則)を徐々に薄めイスラム色を持ち込んでいた。これに反発する中立色の軍部がクーデターを起こしたのだが、経済を成長させイスラム色をにじませて国の国際的存在感を強めているエルドアン人気が世俗主義を押しやっていたようだ。このクーデターで軍人、警官、
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」 米欧メディアの日本会議へのこの種の偏向した批判はこの7月中旬に東京の日本外国特派員協会が主催した日本会議の田久保忠衛会長の記者会見でも象徴されていた。 この会見ではこの日本外国特派員協会を拠点に安倍晋三首相や自民党政権の統治を独裁のように長年、叩いてきたアイルランド人のフリー記者デービッド・マクニール氏らが先頭になって、これまた日本会議を軍国主義や帝国主義の復活を求める危険な組織のように描く追及に終始した。 田久保会長はこの会見で、「日本会議の活動目標は民主主義の範囲内で日本にとっての安全保障や国家認識などでの戦後のゆがみを是正しようとしているだけだ」と説いた。だが米欧メディアの多くは一貫して日本会議を「危険な軍国主義への復活」を求める団体として描くのだ。ニューヨーク・タイムズやエコノミストという大手メディアの論調
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表) 「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月5-11日)」 今週の焦点はG20の場での日中首脳会談だったが、会談は先ほど(5日夜)終わったらしい。安倍首相は尖閣周辺の領海侵入で中国に自制を要求したのに対し、習近平主席は「日本は言動に注意すべし」と発言したらしい。おいおい、言動を注意すべきは中国側じゃないのか、などと茶々を入れても仕方がない。相手は中国人なのだから。 それでも、報道によれば、双方は偶発的衝突を回避する日中防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向け協議を加速させることで合意したというから、日中関係にとっては一歩前進かもしれない。問題はそのような中国側の低姿勢がいつまで続くかだ。このままでは国内の対外強硬派が黙っていないと思うのだが・・・。 3日には米中首脳会談が開かれたが、ここでも目立った進展はなかった。オバマ大統領は
文谷数重(軍事専門誌ライター) かねてから不思議な理屈がある。「駐留米軍がいなくなると中国が沖縄を侵略する」がそれだ。 沖縄の反基地感情が強くなると、決まって出てくる言説である。今回の女性遺体遺棄事件でも、安全保障サイドは、「中国は沖縄を狙っている」と言い出し、特に海兵隊を擁護する「米陸上戦力がいなくなると沖縄は軍事力の真空となる、そこに中国が侵攻してくる」といったものだ。 だが、その根拠となる見積もりや判断が示されたことはない。「なぜ中国が沖縄を侵攻するのか」「中国は対日戦を決意できるか」点の説明はない。結局は、宿命的に「絶対、攻めてくる」といったものでしかない。だが、駐留米軍がいなくなったところで、中国は沖縄に攻めてくるわけではない。その理由は次のとおりである。 ■ 中国の進出方向ではない まずは中国にとって進出方向ではない点である。このため具体的に侵攻対象となるものではない。 沖縄は
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表) 「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2016年7月18日-24日)」 先週は欧州・中東が大きく動いた。14日夜に地中海沿岸リゾート・ニースで大型トラックを使ったテロが起き、翌15日夜にはトルコで軍の一部によるクーデター未遂事件が発生した。これらは一見別個の事件にも思えるが、現代史的には微妙に通じ合っている。今週はその共通項である「ダークサイド」に焦点を当てよう。 まずは、フランスから。31歳の容疑者はチュニジア出身の暴力的で世俗的な男だったようだが、犯行までの数週間で急激に「過激化」していったようだ。今年4月からモスクに通い始め、犯行の2週間前あたりから酒も飲まず、髭を伸ばすようになったという。17日には事件に関連して新たに男女2人の身柄が拘束されたらしい。 歴史を振り返れば、フランス人のナショナリズムの強さには脱帽せざるを得ない。この強
大塚智彦(Pan Asia News 記者) 「大塚智彦の東南アジア万華鏡」 毎度お騒がせのフィリピンのドゥテルテ大統領は、9月6日からラオスで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、東アジアサミットなど一連の会議で最もメディアの注目を集めた「時の人」になった。もっともその理由が暴言や失言、会議欠席など会議本来の目的や議題とは遠くかけ離れた問題ばかりで、各国首脳の反応は徐々に冷めたものになり、メディアも「本論、本筋ではないものの報道しないわけにはいかない」ために報道し、その報道がまた物議を醸すという悪循環が続いた。終わってみれば「ASEAN首脳会議はドゥテルテの言動以外に何があったのか」という後味の悪い、印象の薄い会議となってしまった。 ドゥテルテ大統領自身がそれを望んだかどうかはわからないが、こうした結果に密かにほくそ笑んでいたのが中国であることは疑う余地がない。南シナ海を巡
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」 ランド研究所の報告書「中国との戦争」はもし米中戦争が起きた場合、その形態や地域などについて次のように予測していた。 ・米中戦争は非核の通常兵器での戦闘となる。 (アメリカも中国もともに核兵器の保有国だが、予測される米中戦争ではいずれの国も核兵器は使わず、通常兵器だけでの戦闘になる。アメリカは通常兵器での戦闘がきわめて激しくなっても、勝利への見通しと、自国の大被害への懸念から、核兵器はあくまで不使用で進む。中国ももしアメリカに対して核兵器を使えば、核での大量報復を受け、国家壊滅という事態をも招くとみて、核不使用のままで進むと予測される) ・戦闘は主として水上艦艇、潜水艦、航空機、ミサイル、さらに宇宙とサイバーのハイテクの戦いとなる。 (米中両国とも東アジアにすでに強大な軍事力を配備しており、戦争の契機からみても水上、
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」 沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している――こんなショッキングな警告がアメリカ議会の政策諮問の有力機関から発せられた。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだという。 アメリカ側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきた。だが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しい。アメリカ側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということだろう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないであろう。 日米同盟は
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