二〇〇九(平成二十一)年の秋、私は検察庁と裁判所に送致されるたびに大勢の報道陣に追い掛けられた。 私が乗っている警察車両を撮影する為にへリコプターまで飛んでいた。スモークガラスの車中で『家族ゲーム』のラストシーンみたいなヘリコプターの羽音を聴いていた。 一般道では、車の前後左右を囲まれて、信号が赤になり車が止まるたびに、リポーターが乗っていた車から飛び降りて、カメラマンはスモーク加工の窓にレンズを押しつけ撮影する。信号が青になると彼らも車に乗り、追い掛けてくる。 当然、渋滞になり、先導車がつくことや警察が信号を操作し、赤信号を避けたりもした。乗っている車が通る道路の信号が全部青に変わるという体験は、なかなかできないものである。 顔を隠されていた私が一部始終を知っているのは、同じ車に乗っていた警官が実況中継してくれていたからだ。 「一、二、三、四……、今カメラが八台囲んでます。前の車は、車内