最近、認知科学がマイブームな感じになっていることもあり、いいタイミングで読めた小説だと思う。 この小説は、ロボットについての話であり、そして同時に人間についての話でもある。ロボットが自我をもつとはどういうことか、ということを考え始めると必然的に自我とは何か、〈私〉とは何か、ということについて考えなければならない。 哲学的な問題を科学のスケールで扱う、ということに個人的にはかなり興味をそそるものがある。それは、多分フィクション的な想像力を現実のスケールに持っていこうとするときに考えなくちゃいけない問題だからなんだと思う。この小説が持つ、現実と空想をリアリティを持って交差させるような意志は、自分が所属している学科に近いところもあって、とてもワクワクする。瀬名秀明を読んだのは今回が初めてなのだけれど、ほかの作品も是非読みたくなった。 アニメ脚本家の櫻井圭記は文庫版の解説でこう書いている。 「瀬名