年末ジャンボ書評、つづけて後編です。 【前編はこちら】→「年末年始に読んでほしい!読書のプロ・鴻巣友季子が熱烈におすすめする2023年の小説24作品」 古典の「リライト」と「語りなおし」 今年、英米の文学界では、アガサ・クリスティーなどの古典作品の「リライト」がいっそう大きな問題になりました。名作の「リトールド」ではなく、差別的表現とみなされそうな単語や文章を予め除去したり書き直したりして出版するのです。「古典浄化」などとも呼ばれます。 差別・偏見的表現や発想のチェックにあたるのが、「センシティビティ・リーダー」と呼ばれる人たちでする。一般文芸書には三年ほど前にアメリカで本格導入された制度で、わたしもアマンダ・ゴーマンの詩を翻訳・出版する際に初めてこのチェックを受けました。 人種、ジェンダー、社会階層などにおいて弱者、あるいは複数のマイノリティ性を持っている人が雇われることが多いようですが