人間のけがや病気が自然に治癒するように、使用している製品や構造物に生じた劣化が、人の手を加えなくても勝手に直ってしまう――。そんな夢の機能を持つ材料が、「自己治癒(修復)材」だ。 材料自身に含まれる成分や事前に仕込んでおいた成分などを基にして、ひび割れなどの損傷を修復する性能を持つ。既に、高分子材料や金属材料など様々な領域で研究や開発が進められている。 安倍政権が2013年に掲げた「日本再興戦略」には、「自己修復材料などのインフラ長寿命化に貢献する新材料の研究開発を推進する」と明記された。自己修復材料などの世界市場が30年に30兆円に達するとのロードマップも掲げている。 それらの追い風を受けて、インフラの主要な建材であるコンクリートの自己治癒能力へ関心が高まっている。コンクリートは強度に優れ、加工もしやすい半面、ひび割れやすいという弱点を持っているためだ。コンクリートを自己治癒できれば、長