ブックマーク / honz.jp (22)

  • 『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ

    書は、大人たちの「夢を持て」「大志を抱け」という温かなアドバイスが数多の若者たちを苦しめている事実を剔出する一冊である。なんだそりゃ、軟弱すぎる、大袈裟だ、そんなわけない……などと憤る方は多いだろう。だが、大学の事務職員として学生のキャリア支援と講演活動を精力的に行ってきた著者は、一万人以上の若者の生の声を聞き、もはや看過できない域に達していると痛感する。今の時代、将来の夢の話はただの嫌がらせになるリスクのほうが高いのだ。 とはいえ、あらかじめ断っておくと、このの目的は犯人の糾弾ではない。なぜ夢の話がハラスメント化したのか。第一、夢とは何か。夢の持てる状況とはどのように生じるのか。こうしたメカニズムを詳らかにした上で、多様な生き方を受け容れる社会とはどんなものか思案・思索していく内容となっている。 まずは現状認識から。将来の夢なんかない。やりたいことがよくわからない。自分のキャリアビジ

    『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』大志を抱かない生き方は許容されるか? - HONZ
  • 『江副浩正』自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ - HONZ

    東証一部に上場以来破竹の快進撃でグローバル企業になりつつあるリクルート。わたしはその会社で毎年開かれるNew RINGという社内起業ピッチ大会の審査員を務めている。聞けば車の売買情報誌「カーセンサー」や、結構情報誌「ゼクシー」。最近だと日教育界を大きく変えようとしているネット動画教育サービス「スタディサプリ」などはこのピッチ大会から生まれたのだという。 そんな伝統あるイベントの審査に毎回呼ばれるのは光栄なことだ。そして、その礎を作った張人・江副浩正に想いを馳せる。つい前日も子会社リクルートメディアパートナーズのNew RINGでこんな話をした。「江副さんが作った情報誌のビジネスモデルから一歩進んでテクノロジーそのものにもしっかり投資をしてそのメディアの競争力をより高めることが今のリクルートならできるんじゃないか、そんなプレゼンを期待している」と。著にも登場する「自ら機会を創り出し、

    『江副浩正』自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ - HONZ
  • なるほど!我が国はこういうふうにできているのか 『日本で1日に起きていることを調べてみた : 数字が明かす現代日本』 - HONZ

    なるほど!我が国はこういうふうにできているのか 『日で1日に起きていることを調べてみた : 数字が明かす現代日』 数字、ファクト、ロジック。立命館アジアパシフィック大学の学長にしてHONZ客員レビュアーでもある出口治明さんは、この三つで物事を決定するべきだと説かれている。これはサイエンスにおける研究の進め方でも同じである。なかでも最も重要なのは生の数字だ。相対値ではなくて、絶対的な数字。それがなければ話にならない。 日国についてのそのような数字をこれでもかと惜しげもなく示してくれるのがこのだ。というほど、たいそうなではまったくない。ほとんど脈絡なく、おそらくは著者の興味のおもむくがままに、タイトル通り「日で一日に起きていること」の数字が紹介されていく。 まず、誰もが驚くであろう数字から紹介しよう。それは『551蓬莱の豚まん』の売り上げ数だ。ん、そんな豚まん知らんって? 知らなか

    なるほど!我が国はこういうふうにできているのか 『日本で1日に起きていることを調べてみた : 数字が明かす現代日本』 - HONZ
  • 『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』人が想像できることは、すべて実現できる - HONZ

    NASA JPL(ジェット推進研究所)で火星ローバーの自動運転プログラムの開発に携わる小野雅裕さんの最新作。宇宙を夢見た人々たちの想いと歴史をわかりやすく網羅し、最先端の宇宙開発状況から未来へと想いを馳せる。 現代の宇宙開発はあるSF作家のイマジネーションから全てが始まったことをご存知だろうか?1865年に発表されたジュールベルヌの『地球から月へ』というSF小説は間違いなく人類が宇宙空間に到達することを可能にした大きなきっかけを作ったことは間違いないだろう。そもそもSFというジャンルを作ったのもジュールベルヌといっても過言ではない。書を通じて筆者が訴えたいポイントは「イマジネーション」の力だ。ジュールベルヌは言った「人が想像できることは、すべて実現できる。」と。 そして、ベルヌの『地球から月へ』を読んだ無数の人々の中に、ある重大な事実に気づいた者が3人だけいた。ベルヌの小説で人間は大砲に

    『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』人が想像できることは、すべて実現できる - HONZ
    miraishonen99
    miraishonen99 2018/03/03
    “地球から月へ”
  • 『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂 - HONZ

    「二課の花はサンズイ」と言われる。警視庁捜査二課は、汚職や詐欺、横領、背任、選挙違反などを摘発する部署だ。「サンズイ」は汚職の「汚」のサンズイに由来する隠語で、ゴンベン(詐欺)やギョウヨコ(業務上横領)などに比べ事件の格が一段上とされる。二課の刑事にとって、汚職事件の摘発は、命がけで成し遂げたい悲願である。 『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』は、警視庁創設以来初めてといっていい巨大な事件に立ち向かった刑事たちの活躍を描くノンフィクション。「石つぶて」とは、小さな石ころを意味し、転じて価値のないもののたとえにも使われるが、書に登場する無名の刑事たちの奮闘ぶりは、眩い輝きを放って読者の心に強い印象を残す。 警視庁創設以来、二課が手がけた事件の中で、もっとも複雑かつ巨大な事件。それは外務省内閣官房報償費流用事件、いわゆる「機密費」流用事件だ。 発端はささやかな内部告発だった。外務省に出入

    『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂 - HONZ
  • 『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 コロンバイン高校銃乱射事件。1999年4月20日、コロンバイン高校の学生2人が無差別に発砲を行い最終的に自殺、教師1人と生徒12人が死亡し、24人が負傷した傷ましい出来事だ。発生から15年以上が経った今なお学校銃乱射事件の代名詞的存在とされるのは、犯人であるエリックとディランがそれぞれ卒業を間近に控えた、18歳・17歳の少年だったという若さだけが理由ではない。 2年以上をかけて準備されていた計画の周到さ。そして、何百人もの生徒たちでにぎわう昼時のカフェテリアを爆破するという残虐な構想。計算ミスや完成度の低さにより爆弾は不発に終わったものの、実際の被害を遥かに上回るその計画の大きさは、人々の間に驚きと恐怖の渦を巻き起こした。 言うまでもなく、この事件を題材にして過去に多くのが書かれ

    『息子が殺人犯になった コロンバイン高校銃乱射事件・加害生徒の母の告白』わかりやすい原因などない、という現実 - HONZ
  • マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー

    三十路も四十路もまだまだ幼児?『魔女は三百路から』 2018年11月18日 唐突なんですけど、皆さんは「魔女」の存在を信じますか? そう、あの魔女です。御伽話や物語、もちろんマンガの世界でも何度も見かけるあの魔女です。 くしゃくしゃの顔で先端が折れた三角の頭巾とローブを身...

    マンガ新聞 - 漫画の記事・無料連載・新刊情報・おすすめ漫画レビュー
  • 『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』恋も仕事も、わがまま上等 - HONZ

    アナキスト大杉栄のパートナーで、関東大震災後に大杉とともに虐殺された伊藤野枝の評伝だ。 過激なタイトルだが、ページをめくって腰を抜かす。いきなり「あの淫乱女!淫乱女!」と太字で書いてある。岩波書店が心配になるほど、冒頭から衝撃的だ。 野枝は福岡県の地元ではいまだに逆賊扱いで、十数年前にテレビ局の取材を案内した人によると、同年代の存命のおばあさんが「地元の恥をさらすのくわあああ(大意)」と大声でいきりたって殴り込みをかけてきて、淫乱淫乱叫んでいたというのだから穏やかでない。 とはいえ、おばあさんの気持ちもわかる。大文字の歴史では、伊藤野枝は淫乱、逆賊にくくられても否定できない。 勝手に決められた縁組みによる結婚を破棄しようと逃亡して、女学校の恩師の家に転がり込むし、恩師を捨て自ら大杉栄との四角関係に身を投じるし、平塚らいてうに「あんた仕事しないなら、私に雑誌ちょうだい」と迫るし。大杉が拘束さ

    『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』恋も仕事も、わがまま上等 - HONZ
  • 『牛を飼う球団』「高知ファイティングドッグス」が生んだ地域創生物語 - HONZ

    プロ野球にはNPB(日野球機構)の12球団、いわゆるパリーグとセリーグのほかに、独立リーグという存在がある。2004年のプロ野球再編問題以降、地域密着型の野球チームが設立され、その中の一つ、四国アイランドリーグプラス〈四国IL〉のひとつ「高知ファイティングドッグス」が書の舞台である。 四国アイランドリーグプラスは2005年に設立された。高知は、香川オリーブガイナーズ、徳島インディゴソックス、愛媛マンダリンパイレーツと毎年優勝を争っているのだが、このところ低迷が続いている。(2016.5/5現在 3位) 独立リーグの経営は容易ではない。年間にかかる費用は1億円前後。それで選手の給料から審判やスタッフの費用をすべて賄わなければならない。無名のチームだから集客もままならない。 ではなぜ独立リーグが存在するかといえば、ドラフトで指名されなかった者やなんらかの事情で学校を中退したり、社会人チーム

    『牛を飼う球団』「高知ファイティングドッグス」が生んだ地域創生物語 - HONZ
  • 『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ

    もしも、自らが所属する組織の不正を知ったら、あなたは、その不正を正す勇気を持てるだろうか? 幹部自衛官でありながら、自衛隊組織の不正を、正々堂々と通報した男がいる。彼の階級は、3等海佐(以下、3佐)。「自衛隊は噓をついている」と裁判所に訴えたのだ。 2014年4月23日、東京高等裁判所。21歳の自衛官・Tさんの”いじめ自殺”を巡る裁判の控訴審判決が下された。国に約7300万円の賠償命令。一審の440万円を大幅に上回る遺族側の逆転勝訴判決だった。 この控訴審判決に重大な影響を与えたのが、3佐の存在だ。 そもそも3佐は、一審のときに自衛隊側の弁護士役に当たる指定代理人を務めた人物である。 裁判の経過の中で、自衛隊側は、Tさんが自殺した直後に隊員たちに実施した「直筆アンケート」を「破棄した」と主張し続けていた。しかし3佐は、破棄されたはずのアンケートを目撃してしまった。 「これは一体、どういうこ

    『自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って』 - HONZ
  • 『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』 - HONZ

    やっと終わった。文庫の作業が終わったという意味だけではない。ふだんは見ないようにしていながらも、部屋の片隅にずっとうずくまっていた童子のような存在と向かい合い、やっとうちから出ていってもらうことができたような感覚に今私は浸っている。自分の仕事を褒めるのは抵抗があるが、いい内容だと思う。その満足感、責任を果たせたことの安心感に浸るとともに、童子がいなくなったことの寂寥感もある。 今から十数年前。雑誌の連載で上野の男娼に話を聞いてみようと思った。さして深いことを考えていたわけではなく、ちょっとした思いつきに過ぎなかったのだが、この時の内容がすさまじく面白かった。この面白さは2人の個性に負うところも大きいのだが、彼らは、彼らの存在を越えて私に大きな課題を与えてくれた。 古い雑誌ではよく見ていたノガミ(※上野)の男娼とこの2名がきれいに重なった。その時代から立っていたわけではないのだが、その世代の

    『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』 - HONZ
  • 『帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』 ペンタゴンのヨーダと呼ばれた男 - HONZ

    常に裏舞台で働くことを好み、自己宣伝や世間からの注目を極端に嫌ったアンドリュー・マーシャルの名を知る者は少ない。しかし、「ペンタゴンのヨーダ」と呼ばれ40年以上にわたって政府高官としてアメリカの安全保障に貢献してきたこの男の明晰な頭脳から生み出せされた戦略からは、誰もが無縁ではいられない。マーシャルは、冷戦中のソ連がCIAの推計よりもずっと多くの軍事負担に苦しんでいることを指摘し、精密兵器や広域センサーなどの技術進化がもたらす「軍事における革命」という概念を提案し、何より多くの研究者や高官に多大な知的影響を与えることでアメリカの戦略に変革を起こし続けた。マーシャルがいなければ、世界地図は現在のものとは違ったものになっていたはずだ。 書では、これまで知られることのなかったマーシャルの「知の歴史」が、第二次大戦以降のアメリカの国防戦略の変遷とともに描かれる。マーシャルの業績の多くは未だに機密

    『帝国の参謀 アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』 ペンタゴンのヨーダと呼ばれた男 - HONZ
  • 伝えることで、世界は変わるのか『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』 - HONZ

    「伝えることで、世界は変わるのか」 社会問題をテーマにしたドキュメンタリー映画の配給を生業にしていると、よくこの問いに直面する。映画は、問題について人に“伝える”ことはできるが、温室効果ガスを減らせるわけでも、戦争を止められるわけでも、貧困家庭を支えられるわけでもなく、直接的な“治療薬”にはならない。 この葛藤は、映画に限らず、写真やでも、同じように“伝えよう”とする人であれば、どこかで向き合うものなのではないだろうか。 書「君とまた、あの場所へ シリア難民の明日」は、写真を通じて、被災地や難民キャンプ等の状況を伝えるフォトジャーナリストが、ヨルダンに暮らすシリア人難民たちを取材し、まとめた一冊だ。 シリアは、「アラブの春」と呼ばれる中東地域での民主化運動の波を受けて内戦状態となり、早5年が経つ。国民の半数以上が、国外・国内難民となっている同国の状況は、ISの台頭や周辺諸国の思惑が絡み

    伝えることで、世界は変わるのか『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』 - HONZ
  • 『言ってはいけない』不愉快な真実を直視せよ - HONZ

    最初に断っておくが、これは不愉快なだ。だから、気分よく一日を終わりたい人は読むのをやめたほうがいい。 表紙をめくるとこのような言葉が最初に目へ飛び込んでくる。そしてこう続く。 世界は来残酷で理不尽なものだ。その理由を、いまではたった一行で説明できる。人は幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない なんとも興味が惹かれる文章ではないか。書店で手にしたとき、この文を読んで買うことを決めた。そして読み始めた途端ページをめくる手が止まらなくなったのは言うまでもない。 このには残酷な真実が書かれている。努力は遺伝に勝てない。知能や学歴年収、犯罪歴といったものも遺伝の力に左右されている。また子育てや教育は子供の成長に関係ない。といった身も蓋もない話が多い。けれどすべての話には、進化論、行動遺伝学、脳科学といった学問の見地から、きちんとした証拠が示されている

    『言ってはいけない』不愉快な真実を直視せよ - HONZ
  • 『戦争の物理学』戦史と物理学の歴史の見事な融合 - HONZ

    戦争にまつわる物理学のを書いている」著者がこう話すと、周りからは「物理学が戦争と何の関わりがあるんだい?」という言葉が返ってきたという。続けて「ああそうか、原子爆弾のことだね」と言われたという。『戦争の物理学』という書のタイトルを読んで同じように思った方も多いだろう。もちろん、書では原爆の事も論じられている。しかし、それだけではない。人を殺傷する際の運動エネルギーも全て物理の法則にのっとり行われている。書は古代から現代までの兵器の変遷を物理学の視点から読み解いた、一風変わった作品だ。 書は、それぞれの時代の兵器の変遷を説明し、その兵器がいかに活躍したかを戦記風に記述した後、兵器にまつわる物理的な話へと移る、という構成が取られている。このため、歴史好きの人にもお勧めできる一冊だ。 例えばロングボウという弓の話は「100年戦争」のさなか、ロングボウの活躍により圧倒的な兵力差を誇る重

    『戦争の物理学』戦史と物理学の歴史の見事な融合 - HONZ
  • 図鑑は「積ん読」でいい!?『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』 - HONZ

    書は進学塾で講師として活躍した著者が、辞書、地図、図鑑を使って子どもの知的好奇心を刺激する、また知識を吸収し思考する力を育てる方法を指南した1冊である。リビングに辞書、地図、図鑑を置くことによって、すぐにその場で調べられる環境を整え、子どものアンテナが立った瞬間を逃さない。子どもの気が移ろわないうちに、世界との接点を強化し、またそこから話を広げることで知識の幅を広げ、更なる好奇心を喚起する。 またその際、大人が子どもにどのような関わり方をすればより子どもの学ぶ力を損なわずにいられるか、より伸長できるかを説いている。教育に関心のある方はぜひ読んでいただきたいと思う。しかしながら書の中で特に注目するべき点は、図鑑というの捉え方である。今回は、書中の図鑑に関する部分を特にご紹介したい。 何かを調べたいから、何かが好きだから、より深くその世界の知識に触れたい。来図鑑を購入する目的はそのよ

    図鑑は「積ん読」でいい!?『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』 - HONZ
  • 『宇宙からいかにヒトは生まれたか 偶然と必然の138億年史』 - HONZ

    なぜヒトは宇宙論や生物学に惹かれるのか。それは僕たちの身体が星の欠片からできており、ヒトが細菌のような生物から進化してきたことを自覚しているからだ。書の帯には「宇宙・地球・生命を通史で読める初めての1冊」とある。僕は5000年の通史を書いたが(「『全世界史』講義Ⅰ、Ⅱ」)、これは138億年史なのでまるっきり桁が違う。読まずばなるまいと手に取ったが、比喩がとても巧みで桁外れに面白いだった(何しろ、第一行が「山口百恵というアイドルがいた」から始まるのだ。また、皆さんは、「無人島に落ちていた携帯電話」から何を連想されるだろうか?)。 第1部「宇宙の誕生」。宇宙は3種類しかない。僕たちの住む宇宙は「人間に都合よく調節された宇宙」だ。大部分は「調節されていない、人間のいない宇宙」だろう。「調整されているが人間はいない宇宙」もあるかもしれない。ビッグバンが138億年前に起こり太陽系が46億年前に形

    『宇宙からいかにヒトは生まれたか 偶然と必然の138億年史』 - HONZ
  • 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ

    高野 秀行の最新刊は、固定観念の外側を探検する。テーマはずばり、納豆とは何か? ともすればアカデミックに着地してもおかしくないテーマを、おなじみ高野流の足取りで核心へと迫っていく。このアプローチをアカデミック界の鬼才は、どのように評したのか? 昨夏『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で魔球対決を繰り広げた清水 克行氏に、書のレビューを寄稿いただきました。(HONZ編集部) 私自身もそうだが、東日に生まれ育った者ならば、誰しも納豆については、大なり小なり一家言あるのではないだろうか。関西の知人から納豆はダメだという話を聞くたびに、心の中の優越感を隠し切れないし、たまに外国人で納豆がべられるという人に出会うと、「なかなかやるじゃないか」と、急に親しみを覚えたりする。その根底には、あのニオイとネバリの良さが、そう簡単によそ者にわかってたまるか、という思いがある。納豆はクセがあるだけに、他

    『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ
  • そもそもなぜ地球外天体は地球に到達するのか?──『ダークマターと恐竜絶滅―新理論で宇宙の謎に迫る』 - HONZ

    書名に入っている「ダークマター」と「恐竜絶滅」、どちらもなんてことない単語であるが、かけ離れた関係性の単語なだけに、とてつもなくうさんくさい!「ダークマターとブッダ」ぐらいに意味がわからない! なんてうさんくさいなんだ! と一目見た時につい思ってしまった。 とはいえ著者は『ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く』など数々の著書/実績に加え、ハーバード大学の教授である理論物理学者リサ・ランドールである。きっとおもしろいはずだ。しかし……当にだいじょうぶかぁ? と怪しみながら読んでみたのだが、これがたしかにおもしろい──そして、しっかりとしている。見事に「ダークマター」と「恐竜絶滅」という結びつきそうもない両者を結合し、そこにどのような背景が存在しているのかを丁寧に解説してみせる。 そもそも、研究上この「恐竜絶滅」は好奇心をぞんぶんに煽りたて、謎の追求に必要な駆動力を与えてくれるものの、疑問

    そもそもなぜ地球外天体は地球に到達するのか?──『ダークマターと恐竜絶滅―新理論で宇宙の謎に迫る』 - HONZ
  • 『貨幣の「新」世界史』ハンムラビ法典からビットコインまで - HONZ

    学校の歴史の授業では、お金のはじまりは物々交換だったと教えられることが多いのではないでしょうか。大昔の人たちが、たとえば魚と肉を交換しているイラスト入りの教科書などもあるでしょう。 書『貨幣の「新」世界史』(原題Coined: The Rich Life of Money and How Its History Has Shaped Us、2015年刊)は、私たちの生活に欠かせない存在であるお金を様々な角度から分析しながら、今日に至るまでの長い歴史を紹介していきます。貨幣の世界史というと純粋な経済書のようなイメージがありますが、そうではないところが書の大きな特徴です。生物学、脳科学、心理学、人類学、宗教、芸術など、網羅する範囲は実に幅広く、そこから『貨幣の「新」世界史』というタイトルも生まれました。 従来の貨幣史と異なる点は主にふたつ。まず、生き残りをかけた生物同士の共生関係こそが貨幣

    『貨幣の「新」世界史』ハンムラビ法典からビットコインまで - HONZ
    miraishonen99
    miraishonen99 2016/05/17
    読みたい