大阪・関西万博がいよいよ開幕!ということで、万博直前の2025年を描いた2023年執筆の短篇、長谷敏司さんの「準備がいつまで経っても終わらない件」を10月13日まで無料公開します! ――――― 2025年1月中旬、4月から開催する大阪万博の事務局スタッフである墨田幸太郎は、淀屋橋の万博事務局オフィスで胃を痛めていた。経産省から万博事務局に係長として出向した彼は、テーマパビリオンのひとつ、《パビリオン大阪5.0》の展示を担当している。 30分ほど悩んだ結果、墨田は、上司に苦渋の報告をした。 「パビリオン大阪の展示は、完成しません。学者の先生が、『このままでやるなら、責任者を降りる』と言い出しました。準備が間に合わなくなるので、なんとか続行してほしいと頼みましたが、聞き入れてくれません」 つまり、関西を中心に日本の叡智を結集した学者たちが、展示の完成に待ったをかけたのだ。 上司であるテーマ事業
