Twitterで呟いたことをまとめて記事にしてみる。 最近、でもないけれど、ここ数年、よく見かけるライトノベル批判として、「内容がマンネリ化している」「どれを読んでも同じように感じる」というものがある。 ぼくはそれは必ずしも事実ではないと思っているけれど、一方で、一部の突出した作品を除けば、たしかに内容がワンパターン化しつつある、とも思う。もしそうだとしたら、それは『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』で言うところの「需要に応えた」結果なのだろう。 ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略 作者: 飯田一史出版社/メーカー: 青土社発売日: 2012/04/10メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 120回この商品を含むブログ (32件) を見る 『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』では、ライトノベルとほかの文芸ジャンルの落差として、ライトノベルが常に需要に応
Twitterで散々書き散らしたのだが、大人向けのキャラクター小説を読みたいなあ、と思う近頃である。ここでいう大人向けというのは、子どもに読ませるのはちょっと……と思われるくらいダークだったり、シリアスだったりする傾向のことだ。 具体的な作品例としては、『Fate/Zero』とか『マルドゥック・スクランブル』をイメージしている。かたや同人から出てきた異色作、かたや数々のライトノベル出版社から出版を断られた問題作、というわけで、このような作品はいまの出版事情ではイレギュラーなようなのだ。 しかし、ぼくはもっとこの手のアダルトなキャラクターエンターテインメントを読みたいのである。はっきりいって、ライトノベル的なものは好きだけれど、いまのライトノベルではいかにも物足りない。キャラ萌えはいいのだが、ライトノベルの物語も人物もいかにも子どもっぽすぎる。 それでも、以前はぼくの嗜好を満足させるような作
僕は友達が少ない (MF文庫J) 作者: 平坂読,ブリキ出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2009/08/21メディア: 文庫購入: 33人 クリック: 924回この商品を含むブログ (271件) を見る いま話題のライトノベル『僕は友達が少ない』を読んでみました。ていうか、既刊7巻を3日くらいで読み終えてしまったよ。驚くほどおもしろかったです。やっぱり売れている作品(ベストセラー・ライトノベル)は違うなあ、としみじみ思いますね。 基本的には「隣人部」という外れ者たちの楽園のような部活で、主人公たちがひたすらばかなことを繰り広げる、というだけの話なんですが、どんなに仲良くなっても「いや、おれたちは友達じゃないから」「これはリア充になったときのための訓練」と言い張るあたりが話のキモ。 もちろん、そこが物語の最大の突っ込みどころではあるんだけれど、これはあきらかに作者の計算ずく
どもです。風の噂に聞いたところによると、年末のコミケでサークル敷居亭の新刊『敷居亭の混沌』が発売されるそうなので、ちょこっと記事作成を手伝った者として告知&宣伝をしてみようと思います。 http://d.hatena.ne.jp/sikii_j/20111223/p1 いやあ、敷居さんがスカイプで書けない書けないと泣き言を言っていたときはもうダメかもしれんねと思いましたが、結果としてはいつものように無事印刷にこぎつけた模様。どうして毎回毎回ぎりぎりのスケジュールなのに締め切りに間に合うんだろう。何? 魔法? いやたぶん、何か怪しげな邪神あたりに貢物でも捧げているのだろうと思いますが、オカルトの深淵を覗くことはやめておくとして、本題に入りましょう。 この本でぼくは「「小説家になろう」座談会」という企画に参加させてもらっています。ついでに座談会注釈の大半もぼくが書いているのですが、経緯をご存知
世間では何だかライトノベル32選なるものが流行っているらしいですね。32選ってどう考えても多すぎるだろう、と思わなくもありませんが、既にその数幾千冊にもふくれあがったライトノベルのなかの32作ですから、まあ、意味があるといえなくもないかもしれません。 で、この手の企画が大好きなぼくとしてはいそいそと羅列しようかと思ったのですが、既に後塵を拝した身としてはいまさらに作品を並べ上げることもためらわれます。そもそも最近のライトノベル、全然読んでいないしね。 というわけで、ライトノベル32作を並べるのはあきらめて、「ライトノベルじゃないライトノベル」を並べることにしました。つまり、ライトノベルと一般小説の境界線にあって、何かの拍子に定義論が盛り上がるとき、「これはライトノベルだ」「いや、違う」と話題になるような作品だけをまとめてみたわけです。 本当のことをいうと『たったひとつの冴えたやりかた』とか
ミステリーの書き方 作者: 日本推理作家協会出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2010/12メディア: 単行本購入: 15人 クリック: 67回この商品を含むブログ (29件) を見る Twitterで勧めていただいたので、読んでみた。というか、読んでいる。何しろミステリ作家数十人に取材した分厚い本なので、一気呵成に読みあげるというわけにはいかない。自然、知っている作家のところを拾い読みすることになる。 まずは乙一の「プロットの作り方」。これが素晴らしくわかりやすく、具体的だった。現役の作家がこれほど手の内を明かしてしまって良いのだろうか、と思うくらい。以下に簡単に説明することにする。 乙一のプロットの作り方は非常にシンプルである。かれはいう。 小説は文字が連なってできている一本の線だ。一本の線には両端がある。つまりはじまりと終わりのことだ。その二つをここでは発端と結果と呼ぶ。すべての物
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫) 作者: 河野裕,椎名優出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/05/30メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 232回この商品を含むブログ (169件) を見る 少女は剣を佩いている。「リセット」と呼ばれる神秘のつるぎ。世界を屠り去る力。ひとたび彼女が剣を抜けば、世界はたちまち命をおとし、すべてが事前に「セーブ」した状況へと回帰する。 飛び去った鳥は枝に還り、枯れた薔薇はふたたび咲きほこり、死者さえよみがえって闊歩するのだ。神にも比すべき驚異の力。しかし、彼女が自らその剣を抜くことはない。なぜなら、ひとたびすべてを「リセット」したなら、その効果は少女じしんにまで及び、彼女はそこにいたる経緯を忘れてしまうのだから。 だから、少女は少年に剣を委
はい、今日の記事は「萌え」を調味料にたとえてみるお話です。ある調味料を使っていると、それぞれ異なる味付けがしてあっても、皆同じ味に感じるということがありますよね。「萌え」とは、そういう調味料みたいなものなんじゃないか、ということ。 「最近のライトノベルはみんな似たり寄ったり」といったたぐいの印象論があるけれど、それはここから来ていると思うわけです。 ライトノベルはじっさいにはそれぞれきわめて個性的で、内容的に似てなどいないのだけれど、それでも「似たり寄ったり」という印象を受けるひとがいるのは、それはひとえに「萌え」という調味料の味が強すぎるからではないか、と。 じっさいに現代ライトノベルを眺めてみると、『ソードアートオンライン』のような正統派もあれば、『文学少女』みたいな少女小説ふうの作品もあれば、『ロウきゅーぶ!』みたいなスポーツ小説もあれば、『フルメタル・パニック』みたいなミリタリー・
最近のこのブログの記事は、昔から思っていたことをあらためて形にする、というものが多い。これもそうである。ある作家を語るとき、その評価は全盛期の最高傑作で決めるべきだ、という話。 間違えても「あんな駄作があるからたいした作家じゃない」などというべきじゃないし、全作品の平均で評価することもあまり意味がないと思う。まあ、よほど平均的に出来が良ければそういう点を評価することもできるかもしれないが、基本的には最高傑作で評価することが妥当なのではないか。 ようするに、最低点でも平均点でもなく、最高点で評価することが好ましい、といっているのだが、どうだろう。 個人的には、最低点で評価を決めることは論外だと考える。たとえば山田風太郎はいわずとしれた戦後を代表する天才物語作家だが、ひとつだけどうしようもない退屈だと評判の作品がある。『忍法相伝73』。ひと呼んで天才の駄作である。 ぼくは読んだことないのだが(
「『あの丘の向こうに何があるんだろう?』って思ったことはないかい? 『この船の向かう先には何があるんだろう?』ってワクワクした覚えは?」 ■熱烈推薦開始。 あなたはふだん読書をするほうだろうか。特に小説や漫画などは読まれるだろうか。もしもそうなら、きっとこういう経験をしたことがあるはずだ。 ある日、何気なく手に取った本を、たいして期待もせず、ぱらぱらとめくりはじめる。あなたにとって読書は日常の習慣で、何も特別なことではないから、新作には特別期待しない癖がついているのだ。 ましてその作家はしらない名前、ほんの気まぐれで読んでみる気になっただけ。数時間を切り取ってくれれば儲け物、あなたはそれくらいに思っている。 ところが、一行、二行と読み進めていくうちに、次第に違和感を感じはじめる。長年にわたって培われたあなたの鋭い直感がこう囁くのだ。これは、と、ひょっとしたら、と。 そして数頁、あるいは数十
何を書こうか悩んでいたところ、リクエストがあったのでミステリの「文脈」について書くことにしましょう。 まあ、ある程度ミステリを読んでいる人間にとっては常識以前の知識なのですが、ミステリ、特に本格ミステリには過去から連綿と続く文脈というものが存在します。 つまり、このトリックはあの作家が生み出したこのトリックの亜流だ、とか、この犯人像はあの作品に出てくるあの犯人を思わせる、とかいう長々とした影響の系譜がある。 その系譜を延々と辿っていくとどこに行き着くかというと、天才エドガー・アラン・ポーの短編小説『モルグ街の殺人』に行き着くというのがまあ、一般常識です。 もちろん、異論はあって、中国の公案ものも本格と呼べるとか、オイディプス神話は本格にあたるとかという意見もありますが、一般的とはいえないでしょう。少なくとも『モルグ街』起源説がいちばんポピュラーであることは間違いありません。 で、その後、ド
生まれてはじめて新城カズマの本を手に取って、今この文章を読んでいるあなた。 はじめまして、ようこそ。けっして後悔はさせませんので、安心してお読みください。この物語は、面白いです。 あとがき 新城カズマ『15×24』第1巻を読み終えた。東京都心を舞台に、15人の若者たちの24時間の行動を追いかけた作品で、いまのところ、大傑作!というほどでもないけれど、なかなかおもしろい。で、この作品、いま、はてな界隈で少し話題になっている。 知人と『「15x24」が評判良いんだけど売れてないような気がする』という話になったので改めて取り上げてみます。 集英社SD文庫から刊行されている、新城カズマ氏の新作。現在3巻まで刊行済みで、完結まで毎月刊行予定とのこと。 上記二つの記事もブックマーク数は多いし、読書メーターの感想も好評多めなんですよね。 まんたんウェブでここまでブクマ伸びるのも珍しいなぁ、という一面も。
ペトロニウスさんが〈戯言シリーズ〉の面白さがわからないと言っているので、少し解説してみる。 もっともぼくが『クビキリサイクル』や『クビシメロマンチスト』、『クビツリハイスクール』を読んだのは既に数年前のこと。記憶があいまいな点も多々あるので、うっかりいいかげんなことを書いてしまうかもしれないが、そのときはツッコミよろ。 さて、『クビキリサイクル』に始まる〈戯言シリーズ〉は、いまに至るも西尾維新の代表作である。 正直、『化物語』が楽しめて〈戯言シリーズ〉が全然おもしろくないというのはよくわからないのだけれど、あれですかね、あの青臭く殺伐とした空気を受け付けないのでしょうかね。それとも、ミステリ仕立てになっているせいでしょうか。 該当記事のコメント欄でid:genesisさんが詳しく解説している通り、西尾は初めミステリ作家として登場し、周囲もかれをそう遇した。 しかし、当時流行っていたエロゲ系
「ライトノベルに携わる人々は今一度「風と共に去りぬ」を読むといい」を読んだ。 要約すると、「ライトノベルは読みやすさを重視するあまり、小説本来の魅力である苦みを軽視している。それでは読者に飽きられてしまう。だから、たとえば『風とともに去りぬ』に学んで小説本来の魅力を勉強するべきだ」という内容。 まず、id:skerenmiが既に書いていることだけれど、「暗さや苦さや重さが作品中で重要な役割を果たすライトノベル」はふつうに存在します。 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫) 作者: 桜庭一樹,むー出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2004/11メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 847回この商品を含むブログ (501件) を見る ブライトライツ・ホーリーランド (電撃文庫) 作者: 古橋秀之,前嶋重機出版社/メーカー: メディアワークス発売日: 2000/01/0
コードギアスを、僕は傑作認定をしたい。 その理由は、おもしろかったから!。とにかく楽しかった。この1年ありがとう!!!!ありがとう、谷口監督!!と河原で叫んでもいいです。 スザクは、最後までやっぱり僕には、ヒーローだったし。僕の愛するCLAMPの小狼くんの造形で、あれをやられると、もう震えるほど萌えます。それに、未だ胸にくすぶるアーニャのかわいさ・・・(笑)。CCって、あんなにすれているのに、最後まで、純情な少女だよねーとか(笑)。とにかく、整合性も、ストーリーも何でもいいのだが、おもしろかった。語ることが出くるほどの情報量があったのも僕のような教養主義的に物語を分析する人には、まぁ悪くはないのだが、まぁ正直言って、そんなのは刺身のつまだっ!!。なによりも、カレンの胸の揺れっぷりとか、そういうのが、よかった!。衒学的なことやメッセージ性の解読は、はっきり言って、僕は、自分が好きだからやって
PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ) 作者: 唐辺葉介,冬目景出版社/メーカー: スクウェア・エニックス発売日: 2008/07/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 29人 クリック: 950回この商品を含むブログ (85件) を見る 「何もかもただの音楽なのよ。ある日目を覚ましたらレコーダーが止まってみんな死んでいるわ。ねえナオ、そうであってほしい?」 ひとつの噂話がネットを流れている。唐辺葉介という名の新人作家の正体が、引退したシナリオライター瀬戸口廉也だというのである。 『CARNIVAL』、『SWAN SONG』、『キラ☆キラ』の3作をのこし、いなくなってしまった奇才が、ライトノベルの世界で新作を上梓する。いかにもありそうな話であるが、はたして本当なのか? さっそく読んでみた。 読んでみたのだが……これはひょっとしたらひょっとするかもしれないな
全部が全部じゃないですけど、乙女ゲーのパッケージ(またはメインビジュアル)では、主人公の女の子が中心に描かれてるんですよね。 それに対して、ギャルゲでは主人公がパッケージに描かれることはほとんどありません。ぱっと思いつく限りではpropellerの東出ゲーくらいしかない。 ギャルゲでは主人公が無個性だから、というのは微妙に当てはまりません。個性のある主人公だっているし、反対に乙女ゲーの主人公(ヒロイン)だって強烈な個性を持っているとは言えないです。むしろどちらかというと、ヒロインの個性は抑えめであるような気がします。 では、この違いはどこからくるのだろう? 「ギャルゲと乙女ゲーのパッケージ絵の違いについて」 さて、どこから出てくるんでしょう。たぶん両ジャンルの本質にかかわる問題だと思うので、なかなか興味深いところです。 その前に「乙女ゲームでは主人公が描かれ、エロゲでは描かれない」という法
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