2022年の2月24日、ロシアがウクライナを全面侵攻し始めたとき、まず読んだのが経済学者のブランコ・ミラノヴィッチのブログだった[★1]。 ミラノヴィッチの名は、その前年に日本でも話題になった『資本主義だけ残った』という書籍で知っていた。彼はその本のなかで、リベラリズムと権威主義の対立が話題になっているが、実際に起きているのは能力主義的資本主義と権威主義的資本主義というふたつの資本主義モデルの競争であり、20世紀の共産主義の広がりもじつは後者成立の前段階でしかなかったという歴史観を披露している。新鮮で印象に残っていた。 とはいえ、ミラノヴィッチの著作で読んだのはその1冊だけで、熱心な読者というわけではなかった。それなのに彼のブログにまで辿りついてしまったのは、侵攻当日、戦争勃発で興奮したのか、ここぞとばかりに正義について語り始めた「国際政治学者」や「軍事評論家」たちのツイートにうんざりして