学生時代に暮らしていた実家の部屋で目が覚める。勉強机も、当時好きだったアーティストのカセットテープも、使いかけのシャープペンシルや赤ペンも、もう必要のなくなった教科書も何もかもそこにある。朝日が差し込んで、鳥のさえずりしか聞こえない。 普段、私が暮らしている都会では、幹線道路を走る車の音や、空を飛ぶ旅客機の音が絶えず聞こえている。窓からは見渡す限りの住宅とビルが見える。いつも新しいマンションやビルが建てられ、赤と白の重機がにょきにょきと生えている。そんな環境とは大違いだ。 窓を開けると、新鮮な空気が風に乗ってカーテンを揺らし、ふわりと頬に触れた。気持ちよさを感じながら、2階から庭を見下ろして、あっと声を上げた。一面がボウボウに生えた草に覆われていたからだ。 父も母もいなくなった空き家の管理のため、たびたび帰省することに疲れ果てて、私は初めて数か月の間を開けた。毎月のルーティンだった遠い故郷