古典の授業で『枕草子』を勉強しても、『枕草子』全部を通して読んだ方はあまりいないと思います。また、受験勉強的な知識として、『枕草子』は約300の章段からなる作品であると記憶した方も、それらの章段がどのような順序で並んでいるのかを知っている方は少ないのではないでしょうか。 高校までの古典の教科書では、『枕草子』のいくつかの章段を適宜選んで載せているので作品の全体像が分からないのも当然です。大学で古典文学を専攻した学生が、本格的に『枕草子』を勉強して最初に驚くことは、作品全体の形がとても不安定だということです。それには、様々な内容の文章から成っている作品の形態自体の不安定さと、現存している写本の内容が大きく異なることによる本文確定の不安定さという二つの面があります。 後者から先に説明しましょう。作者が実際に書いた当時の文章が、現在までそのままの形で伝えられていないのはどの古典も同じですが、『枕
![(4) 『枕草子』の4種の伝本 | 『枕草子日記的章段の研究』発刊に寄せて(赤間恵都子) | 三省堂 ことばのコラム](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/27348b443f1ccd4c6510a44ed8ccb2abe6851f3e/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fdictionary.sanseido-publ.co.jp%2Fwordpress%2Fwp-content%2Fuploads%2Fogp.png)