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ブックマーク / honz.jp (56)

  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
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    morutan 2020/02/13
  • 『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか - HONZ

    いったんでき上がった社会の仕組みは、社会のコンセンサスがなければ決して変わらない。 そして、その前提となるのは透明性と公開性であり、これがない改革は必ずつまずく。 こうした仮説のもと、雇用、教育、社会保障、地域社会、政治、さらには日人の「生き方」までを規定している「慣習の束」がどのようにでき上がってきたのかを、歴史的事実と豊富な参考文献に基づいて丹念に解き明かしているのが書である。 とくに今、日型雇用慣行(女性と外国人に対する閉鎖性、正規と非正規との格差、転職のしにくさ、高度人材獲得の困難さ、長時間労働と生産性の低さ、ワークライフバランスの悪さなど)に対する閉塞感が蔓延しており、働き方改革が叫ばれているにもかかわらず、なかなか社会は変われない。なぜなら、今の雇用慣行は経営の裁量を抑えるルールとして、労働者側が歴史的に達成してきたものだからである。 日では、職務の明確化や人事の透明化

    『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』日本型雇用慣行は、なぜこれほどまでに変わらないのか - HONZ
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    morutan 2019/10/09
    小熊英二かあ
  • 『空をゆく巨人』国境を越えた友情を追う - HONZ

    第16回開高健ノンフィクション賞受賞作は川内有緒『空をゆく巨人』に決定した。 ノンフィクション好きはこの作者の名に見覚えがあるかもしれない。『バウルを探して地球の片側に伝わる秘密の歌』(現『バウルの歌を探しにバングラデシュの喧騒に紛れ込んだ彷徨の記録』幻冬舎文庫)で第33回新田次郎文学賞を受賞した実力派なのだ。バングラデシュの「バウル」という吟遊詩人を追い求める旅は奇跡のような物語だった。 今回の作品は中国人の世界的現代美術家、蔡國強と福島県いわき市の会社経営者、志賀忠重との強い友情を追ったドキュメンタリーだ。 蔡國強という名前を知らなくても、北京オリンピックの開会式で空にビッグフッドの花火を打ち上げた人、と聞けば思い浮かぶ人も多いだろう。1957年に福建省泉州に生まれた蔡は墨絵作家の父の血を引く生まれながらのアーティストだ。文革が終わり、自由に芸術作品の創作ができるようになると、蔡は

    『空をゆく巨人』国境を越えた友情を追う - HONZ
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    morutan 2018/12/28
  • 『美酒復権』NEXT5のその先へ - HONZ

    「NEXT5」というグループをご存じだろうか?日酒が好きな人ならきっと一度は耳にしたことがあるだろう。ゆきの美人の小林忠彦。白瀑(山)の山友文。福禄寿(一白水成)の渡邉康衛。新政の佐藤祐輔。春霞との栗林直章。秋田の蔵元5人が2010年に結成した蔵元集団である。共同で醸造酒をつくり、酒造りを研究し、技術と精神を切磋琢磨している醸造家集団だ。 2014年からは各界の著名クリエイターとのコラボも展開し、アーティストの村上隆や建築家の田根剛らとコラボレーションした共同醸造酒を販売してきた。今年は「NEXT5 hyougemono2018」と銘打ち、山田芳裕の漫画『へうげもの』、『へうげもの』スピンオフ「激陶者集団へうげ十作」with friendsの三位一体コラボという形で、酒杯と共同醸造酒のセットを販売した。どの酒杯がついてくるかわからない、大人のガチャといった趣で、私もついつい器欲しさに

    『美酒復権』NEXT5のその先へ - HONZ
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    morutan 2018/12/04
  • 笑って楽しめ!『暁斎春画』 - HONZ

    まったくの私事で恐縮だが、このレビューをHONZにアップする日に還暦を迎える。せっかくなので、還暦らしく赤いをレビューすることにしようと思った。『赤』といえば、教学社の出す大学入試過去問集だけれど、さすがにそんなもんレビューするわけにはいかないし、その能力もない。 行きつけの屋さんをうろついて探すと、平積みの中にひときわ目をひく一冊があった。中国文学者・守屋洋氏の『世界最高の人生指南書 論語 人生に革命を起こす最強の生き方』である。おぉ、還暦にふさわしそうではないか。しかし、帯に「成毛眞氏推薦」とあって、何故かHONZ代表・成毛眞の大きなイラストが使われている。こんな帯にしたら、誰が書いたかわからんやないの。帯がふさわしくないので却下。守屋先生、せっかくの機会でありましたが、残念です。成毛眞が悪いんです。 真っ赤なカバーのはそれほど多くない。それに、HONZでは3ヶ月以内に出版

    笑って楽しめ!『暁斎春画』 - HONZ
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    morutan 2017/03/14
  • 『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』誰も見たことのない宮沢賢治を描く - HONZ

    子どもの頃、ラジオパーソナリティーの軽快なトークに夢中になった。なにより憧れたのが、ゲストを気安く呼び捨てにするところだ。不思議なもので、それだけで親密度が増す。アイドルとまるで友だちのように語らうパーソナリティーを心底羨ましく思ったものである。もっともそれも演出の一環であったと後に知ることになるのだが。考えてみれば当たり前だ。アイドル全員と友だちのパーソナリティーなんているわけがない(いたらいますぐにでもラジオパーソナリティーに転職したい)。 だが宮沢賢治の愛読者となると話は別である。誰もが親しみを込めて「賢治」と呼ぶ。それも「ケンジぃ~」と嬉しそうに手を振る眩しい青春ドラマみたいな友人関係とはちょっと違う。「賢治……」と愛おしそうにつぶやいてそっと手を握るような、そんな初々しさがどこかにあるのである。それはきっと、賢治の生き方や作品がぼくたちの魂の柔らかい部分に触れてくるからに違いない

    『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』誰も見たことのない宮沢賢治を描く - HONZ
  • 『バッド・フェミニスト』訳者あとがき - HONZ

    なにげなく眺める英語圏のエンタテインメント情報サイトやファッション雑誌の見出しに、「フェミニスト」の文字がよく目につくようになったのは、いつ頃だったろう。日と比較すれば昔からずっとそうだったとも言えるけれど、2010年代、特にここ数年は、若い世代の女性に向けたメディアで、それこそ「いけてる子は全員フェミニスト」ぐらいの勢いを感じる。 もちろんこれは日在住の、そうした話題に関心のある一個人の観測範囲での話だから、偏っているに決まっている。とはいえ、たとえばセールスや受賞歴など数字の上でも今日のポップ・ ミュージックの世界に君臨する「女王」ビヨンセは、2014年のMTVビデオ・ミュージック・ アワードのパフォーマンスで巨大な「フェミニスト」の文字を背に立ち、その後も女性を祝福する作品を発表し続けている。国連ウィメン(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)は、『ハリー・ポッ

    『バッド・フェミニスト』訳者あとがき - HONZ
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    morutan 2017/02/08
  • 『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ

    夏目漱石に「私の個人主義」という作品がある。これは小説ではなく、大正3年(1914年)11月25日、学習院で行なわれた講演の記録である。代表作というわけでもなく、日頃あまり脚光を浴びることもないが、私は日人全員が読むべき作品と思っている。少なくとも中学か高校の国語の教科書には載せるべきだ。『こころ』よりは絶対に教科書にふさわしい。個人主義というとすぐ、「自分勝手」と同義 に解釈し、「現代は行き過ぎた個人主義の弊害が」などと言う人が多い。しかし、漱石の言葉を読めば、 個人主義は決して自分勝手ではないし、今も決して行き過ぎてなどいないことがよくわかる。 まず漱石は 「自己の個性の発展を仕遂げようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならない」と言っている。個人主義とは、「自分という個人」の自由と権利が広く認められることではあるが、それは同時に誰もが、「他人という個人」の自由と権利も広

    『あなたの人生の意味 先人に学ぶ「惜しまれる生き方」 』 - HONZ
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    morutan 2017/01/23
  • 『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ

    著者のマリー・カーペンターは米国でも環境やの安全に対して住民意識が高い先進地域に在住するジャーナリストで、ダムを取り壊した川にサケが還ってきた事例など、環境問題に関する報道も多く手掛けている。 書ではまず、もともとは呪術者や王侯貴族専用の「魔法の薬物」だったチョコレートやコーヒー、お茶など、カフェインの入った飲物が一般大衆にも嗜好品として普及するようになった歴史的過程をたどる。古代には神官や呪術者など、一部の限られた人たちが伝承された専門知識や経験に基づいてカフェインを使いこなしていたと思われるが、現代では一般の人たちも手軽に利用できるようになり、カフェインにまつわるさまざまな問題が生じている。著者はそうした悲喜劇を数多くの事例を交えて取り上げている。現代社会でカフェイン問題が生じている根的な原因は、誰もが魔法の粉を簡単に手に入れることができるようになったにもかかわらず、私たち一般

    『カフェインの真実 賢く利用するために知っておくべきこと』 - HONZ
  • Viva la クラフトビール『究極にうまいクラフトビールをつくる』 - HONZ

    スプリングバレーブルワリー東京が代官山にオープンする。2014年7月にそのニュースを耳にしたとき、たまたまその名には見覚えがあった。ちょうどその頃、ビールにハマりはじめたところで、ビールに関するをいろいろと読みあさっていた。そのなかで『ぷはっとうまい日のビール面白ヒストリー』というを読んでいたときに、その名前を目にしたのだ。 スプリングバレーブルワリーは、ウィリアム・コープランドが日ではじめてビールを醸造した会社である。潰れてしまい、紆余曲折あってそれを引き継いだ会社が、キリンの前身となる会社だったはずだ。その名を冠したお店がオープンすると聞き、オープンしたその月にその店を訪れたことを覚えている。そこではその店で醸造しているクラフトビールが提供されていた。普段飲んでいるビールとは全く違う、味わい豊かなビールに舌鼓を打った記憶がある。 今日紹介するはそのスプリングバレーブルワリー東

    Viva la クラフトビール『究極にうまいクラフトビールをつくる』 - HONZ
  • 万の心を操る『シェイクスピア 人生劇場の達人』 - HONZ

    ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)は、おそらく世界で最も知名度のある詩人であり劇作家だろう。『マクベス』や『ハムレット』などの名作は世界各国でローカライズされ読み継がれ、今でも頻繁にオペラとなり舞台となり上演を続けている。 シェイクスピアの演目は20世紀後半まで英国ロイヤル・シェイクスピア劇団が最も権威ある公演と考えられてきた。しかし時代は変わり2006年、蜷川幸雄演出の悲劇『タイタス・アンドロニカス』が同劇場で上演、大絶賛を浴びた。日で創られたシェイクスピア劇は英国をはじめ世界にも通用すると証明されたが、同時に、シェイクスピア作品は世界各国の文化にまで浸透していることを表しているかもしれない。 書はシェイクスピアが生きた動乱の時代を踏まえ、彼の人生と作風、そしてシェイクスピア・マジックと呼ばれる作品トリックを解明していく。 著者は東京大学総合文化研究科教授、かつシェイク

    万の心を操る『シェイクスピア 人生劇場の達人』 - HONZ
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    morutan 2016/07/13
    本書はシェイクスピアが生きた動乱の時代を踏まえ、彼の人生と作風、そしてシェイクスピア・マジックと呼ばれる作品トリックを解明していく。
  • ウブな日本人必読!『国が崩壊しても平気な中国人 会社がヤバいだけで真っ青な日本人』 - HONZ

    書のタイトルをみて「えー、何でこんなをHONZで紹介するの?」と思った方、ちょっと待った。書は凡百の嫌中書とはわけが違う。なにしろ書いたのが、あの谷崎光である。ここに注目してほしい。 彼女は小林聡美の主演で映画にもなった『中国てなもんや商社』という傑作ノンフィクションの著者である。(残念ながらDVD化されていない) 新卒でダイエーと中国の合弁商社に入社し、中国人の狡さ、強かさに驚いたあまり、会社を辞めて北京大学に入学、北京在住15年目になる作家だ。中国人の思考と行動を分析し、日人へのアドバイスをし続けている。 そこに中国人に対する悪意はまったくない。むしろ呆れつつ尊敬していると言っていいだろう。このにも書かれているが、長く住んでいるといつの間にか感覚が中国人ぽくなってしまい、あまりにも素直な日人に対して怒りさえ感じることもあるようだ。書のタイトルはその怒りが滲んでいるような気

    ウブな日本人必読!『国が崩壊しても平気な中国人 会社がヤバいだけで真っ青な日本人』 - HONZ
  • 魂の作家『手の国の鬼才たちMIZUMA』 - HONZ

    2016年の日経済は欧州金融機関の混乱、中国経済の減速、また日銀行のマイナス金利政策により波乱含みの年になりそうだ。それでも欧米主体の現代アート業界は不思議なもので、クーンズやハーストなどアーティストであれば安定した優良株のように、供給するたびに買い手がつくほどの市場が形成されている。 牛の輪切りをホルマリン漬けにした作品で知られるダミアン・ハーストはニューヨークのガゴシアン・ギャラリーで取扱う彼のドット絵ですら1点100万ドル以上で瞬く間に売れる。世界中のギャラリーが集結し販売されるアートバーゼルなどのフェアだと、コレクターはブランディングされたわかりやすい作品を欲しがる傾向にあるので、セイの法則でいう「供給はそれ自身の需要を想像する」が具現化されている。 そんな中、人気作家の制作方法はアンディ・ウォーホルのファクトリーやルネサンス期のミケランジェロよろしく工房形態をとるようになる。

    魂の作家『手の国の鬼才たちMIZUMA』 - HONZ
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    morutan 2016/06/11
    ミヅマ所属のアーティストの解説6人
  • 『学びとは何か』乳幼児の言語発達から超一流の学びまで - HONZ

    記憶と知識の違いは何か、そもそも幼児はどのようにして言葉を学びはじめるのか、覚えても使えない知識と新しいことを生み出すことができる知識は何が違うのか、凡人と一流、そして超一流の学び方の違いは何か。「学び」についての疑問は、人生のどの局面においても好奇心をそそられる。 しかし、何を「学び」と定義するかはひとりひとり違う考えを持っており、「よい学び」という価値判断を含んだ問いが提示されれば、多くの人が自分の経験から自説を展開し、議論を論理的に収束させることが難しい。 現在のところ、共通見解となりうる「学び」の全メカニズムは解明されてはいないが、新たな道具や方法が開発され、新たな発見がなされ、「学び」について以前よりも明らかにされている。さまざまな分野で研究が進む「学び」であるが、書では認知科学の視点から深遠な学びの世界を明らかにしていく。 認知科学はヒトのこころの成り立ちと仕組みを明らかにす

    『学びとは何か』乳幼児の言語発達から超一流の学びまで - HONZ
  • やりたいからやる『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』 - HONZ

    書は16人の在野研究者の生き様を紹介するというシンプルな構成だ。謎の同人ウェブメディア「En-Soph(エン–ソフ)」での連載シリーズ「在野研究のススメ」を、再構成しまとめたもので、すべての章は読み切りだ。 論文の数や掲載誌のインパクトを追求する一般的な研究者とは異なり、我が道、我が学問を行く在野研究者たち。制度や固定観念に囚われることのない、彼らの研究内容は独特で、鋭さと危うさを兼ね備えた魅力を持つ。しかし、研究内容にもまして、興味深いのは、その生活事情や金銭面の工面である。そこはしなやかで、したたかに、自分のやりたいことを、やり続けるための作戦がある。 生活のできる限りを研究に捧げるために、利用できるリソースを徹底的に活用するストイックな姿勢を崩さないのは、研究のために「どれくらい働いたらいいか?」という問いを立てた三浦つとむである。一方で、親の仕送りに寄生し、弟に呆れられるまで海外

    やりたいからやる『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』 - HONZ
  • 『犯罪の世間学』なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか - HONZ

    90年代末以降、刑事司法の厳罰化が進んでいる。80年代からは量刑はざっと見て倍になり、00年の少年法改正を皮切りに法律改正のラッシュが続いた。10年には時効も廃止された。 犯罪が増加したわけでも、凶悪化したわけでもない。むしろ諸外国と比べても日の犯罪率は低い。東日大震災時に被災者が避難所で整然と行動していたことは海外メディアにも絶賛された。 治安の良さとそれにも関わらず起きている厳罰化の流れ。いずれも「世間」に日人が未だにがんじがらめになっているというのが刑法学者の著者の主張だ。 日には社会が存在せず、伝統的に世間が存在したとの指摘は阿部謹也が提唱した世間論で広く知られる。著者は世間を「日人が集団になった時に発生する力学」と定義しながら、「既読スルー」や「空気を読む」を例に世間論を紹介、特徴を解説する。 「世間」には「共通の時間意識」に基づく「人間平等主義」があるため、日人は能

    『犯罪の世間学』なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか - HONZ
    morutan
    morutan 2016/04/09
    犯罪が増加したわけでも、凶悪化したわけでもない。治安の良さとそれにも関わらず起きている厳罰化の流れ。「世間」に日本人が未だにがんじがらめになっているというのが刑法学者の著者の主張。阿部謹也、世間/社会
  • 『バイエルの謎 日本文化になった教則本』文庫解説 by 最相 葉月 - HONZ

    小学生の頃、同じマンションに住むピアノの先生の家に週に一回、通っていた。自分の家にピアノがないのに習うというのは、今考えるとかなり無謀な挑戦だった。練習に使用したのは、赤い表紙のバイエル教則。正直、つまらなかった。赤を終えると黄色になったが、依然としてつまらなかった。同じことの繰り返しで飽き飽きした。 少し楽しくなってきたのは、父親が電気オルガンを買ってくれてから。発表会に向けて課題曲も決まった。テオドール・エステン作の「人形の夢と目覚め」。静かでゆったりとしたメロディーで始まり、途中から軽やかなテンポに変わる。まさに眠りから覚めた人形が突然踊り出すような可愛らしい曲だった。 転居先の町でも引き続きピアノ教室に通った。だが、私のピアノはここで練習したチェルニー教則で終わる。シャープやフラットの数が増えてわけがわからなくなったためだ。いや、もっと決定的な理由がある。ラジオから流れてきたビ

    『バイエルの謎 日本文化になった教則本』文庫解説 by 最相 葉月 - HONZ
  • 『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』経済物理学における周辺研究 - HONZ

    数百万冊におよぶ書籍の単語を、ビッグデータと捉えたら何が見えてくるのか? Google がスキャンした大量の書籍で使われている単語・フレーズの使用頻度を年ごとにプロットするシステム「グーグル・N グラム・ビューワー」。書はこのビューワー自身の開発者によって、「カルチャロミクス」と名付けられた全く新しい人文学研究を紹介した一冊である。稿では、この研究の背景となる「経済物理学周辺の最前線を、東京工業大学の高安 美佐子氏に解説いただいた。(HONZ編集部) コンピュータを使った新しい文章の読み方 通常、文章の書き手は、どういう順番で話を展開すれば、読み手に内容を伝えられるかを考えながら言葉を一つひとつ選び、それらをつないでいく。そして読み手は、初めの単語から順番に読み解き、その内容を理解する。しかし、書のテーマとなっているように、コンピュータを用いた分析技術を用いれば、人間が文章を理解する

    『カルチャロミクス 文化をビッグデータで計測する』経済物理学における周辺研究 - HONZ
  • 『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ

    2007年4月、ワシントン・ポスト紙の元記者でピュリツァー賞受賞者デイヴィッド・フィンケルは、バグダッド東部にあるラスタミヤという、だれも行きたがらないアメリカ軍前線基地に赴いた。そこは、「すべてが土色で、悪臭に覆われ」、「風が東から吹けば汚水の臭いがし、西から吹けばゴミを焼く臭いがし」、「外に出るとたちまち頭からブーツまで埃まみれになる」場所だった。 2007年1月にブッシュ大統領が、「バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」さらに2万人の兵士をイラクに送ると発表したのを受け、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第一歩兵師団第四歩兵旅団第十六歩兵連隊第二大隊がイラクに派遣されることになった。フィンケルが赴いたのは、この大隊に密着取材し、大隊の指揮官のラルフ・カウズラリッチ中佐を中心に、戦場における兵士たちの実情をレポートするためだった。 そして書(原題「The Good S

    『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ
  • 『食糧と人類』エネルギーから見た文明史 - HONZ

    「文明を動かす究極のエネルギーとは何か?」 この問いへの答え方は、その人の考え方よりも置かれた状況に左右されるのかもしれない。 「文化」や「技術」という答えが場所を占めるようになったのは、何千年というスパンで見ればここ最近のことだろう。それらを謳歌できるのも、うに困らなくなってからの話である。これまでも、そしてこれからも、文明を動かすエンジンはべ物だ。 文化技術ではなく、糧生産を軸に文明について考えてもいいのではないかと著者は言う。その歴史は、1つの問題を解決するとまた別の問題が持ち上がる、危機と方向転換のサイクルを繰り返しながら進んできた。書は、何千年にもわたる壮大な糧史を一気に振り返ろうとする意欲的な1冊である。 狩猟採集から農耕定住、そして都市生活へ。エネルギー不足から過剰への転換、そして環境問題の発生。糧生産の歴史を把握するには、そうした大きな流れの中にある、数々の分

    『食糧と人類』エネルギーから見た文明史 - HONZ
    morutan
    morutan 2016/01/30
    『定住生活を送るにあたって人類が長らく向き合ってきた問題は、「土壌の養分をどうやって保つか」、「労働力をいかに確保するか」の2つに集約されると言われれば、ずいぶん頭が整理される。』 炭素・窒素・リン