「一世一代のチャンスがきたと思った」 高校を出て19歳で金属装飾の世界に入ったガッザニガはちょうど50歳になったところで、長年培ってきた仕事ぶりを世に問いたいと期するものがあったらしい。 工房に1週間こもり、デッサンを描き、造形粘土をこね回した。閃くものがあり、高さ30センチほどの石膏モデルを一気に造形すると、実物大の立体物としてコンペに出品した。 コンペの応募要項に立体物出品についての記述はなく、受け付けてもらえない恐れもあったが、あに図らんやFIFAの審査員たちはガッザニガの石膏モデルを絶賛。実際に手にとって握り心地をリアルに体感させ、テレビ映りを想起させたことが大いに審査員の心証を良くした。 「私が作りたかったのは、スポーツにある根源的な価値と調和、つまり歓喜する選手とそれを受容するこの世界そのものの2つだ。それを表現するために、トロフィーは躍動感にあふれながらも流れるようなシルエッ