幸せの定員(創作小説) ***+2*** 警察の懸命の捜査にも関わらず、犯人の手がかりが一つも得られないまま、一カ月が過ぎていた。 そして、事故の日以来、鬱々と沈み込んでいたそのクラスに転校してきたのが和幸だった。六年生は二クラスしかなく、一組に比べて人数が少なかったという理由だけで和幸は二組に自動的に割り振られたのだ。そのことは沙耶香が事故に遭う前からすでに決められていたことだったから、それは当然、沙耶香の空席を埋めることを意識したものではなかった。 先のタカッチャンの不用意な一言は、ひょっとすれば、沙耶香さえいてくれれば元の平和なクラスに戻れるのに、という思いが無意識に現れただけだといえるかも知れない。ただ、その言葉はあまりにも考えがなさすぎた。 お気に入りのクマのぬいぐるみをなくしてしょげている幼児に別の新しいウサギのぬいぐるみを与えて慰めようとしているようなものだった。タカッチャン
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