山之口貘(やまのくち ばく)という詩人がいた。1903年、沖縄・那覇の生まれで、1963年没。寡作な詩人だったが、沖縄という風土に根差した詩が多いのは当然のことか。 その山之口の詩に、「会話」と題された一篇がある。『山之口貘詩文集』(講談社文芸文庫、1200円+税)に収録されている。 「会話」 お国は? と女が言つた さて、僕の国はどこなんだか、とにかく僕は煙草に火をつけるんだが、刺青と蛇皮線などの聯想を染めて、図案のやうな風俗をしてゐるあの僕の国か! ずつとむかふ ずつとむかふとは? と女が言つた。 それはずつとむかふ、日本列島の南端の一寸手前なんだが、頭上に豚をのせる女がゐるとか素足で歩くとかいふやうな、憂鬱な方角を習慣してゐるあの僕の国か! 南方 南方とは? と女が言つた 南方は南方、濃藍の海に住んでゐるあの常夏の地帯、竜舌蘭と梯梧と阿旦とパパイヤなどの植物達が、白い季節を被つて寄り
![沖縄の詩|風塵だより](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/3a55c41d6cf2c1b3be757f04fdb08b9d1aa65ab0/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.magazine9.jp%2Fwp-content%2Fthemes%2Fmagazine9%2Fcategorypict%2Fhu-jin.gif)