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ブックマーク / finalvent.cocolog-nifty.com (17)

  • [書評]サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代(下條信輔): 極東ブログ

    人間は自分で意識し、自由な意志をもって行動していると思い込んでいる。だが脳の機能を実験的に解明していくと、実は人が自覚していない脳の認識プロセスの結果として、その意識や意志が出力されていることが明らかになってきた。 人が気がつかない何かが、その人の意識を決定しているというのだ。では、その何かとは何か。現代に溢れる各種メディアの情報である。意識的に気がつかないがゆえに、人の意識の及ばないところにあってその意識に注入され、意識を決定する。それが現在の人間の置かれた状況であり、そもそも人間とはそのような存在として進化してきたのではないか。書「サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代(下條信輔)」(参照)が問い掛ける、ある意味で奇っ怪なメッセージはそれだ。 人の脳の意識構造にありながら人は意識していない領域を、著者下條は潜在認知と呼び、潜在認知を突き動かしているのは情動であると考え

  • [書評]日中戦争はドイツが仕組んだ 上海戦とドイツ軍事顧問団のナゾ(阿羅健一): 極東ブログ

    先日、日中双方10名ほどの有識者による歴史共同研究の報告書が公開されニュースになった。大手紙の社説などでも言及されていた。共同研究は2006年10月安倍晋三首相(当時)が訪中に際し、胡錦濤国家主席との会談で合意されたものだ。近代史については中国側の都合で非公開となったとのことだが、読める部分はどんなものだっただろうかと思っていたら、外務省で電子文書で公開されていた(参照)。 中国側の見解もまとめられていたが私は中国語が読めないのでわからない。この部分も翻訳・合し、政府補助で安価に販売されたらよいのではないかと思った。新聞などの報道では、暴発ということでほぼ定説化しつつある盧溝橋事件について中国側でも「発生は偶然性をもっているかもしれない」との理解が示されたといった点に着目していたが、他も全体にバランス良く書かれていて、存外にというのもなんだが、よいできだったことに驚いた。なお、盧溝橋事件

  • 柳条湖事件と盧溝橋事件の比喩性: 極東ブログ

    昨日尖閣沖衝突事件中国側の背景について触れたが、もう一点補足と関連の話をしておいたほうがよいかもしれないとも思った。なぜこの時期に中国は領海問題というタッチーな問題で騒ぎ出したのか、そして、なぜ胡錦濤政府は過剰なまでに強行的な立場を取るのか。 9日のことだが広東省広州市の日総領事館外壁に中国人男がビール瓶投げつけ公安当局に取り押さえられた(参照)。また12日には天津市の日人学校のガラス窓が撃ち込まれた金属球で割られる事件が発生した(参照)。こうした絵に描いたような反日運動誘導的な事件だが、時期的に今回の尖閣沖衝突事件の文脈で報道された。 実際には、柳条湖事件から79周年を迎える9月18日にちなんだ、予期された反日活動の一環でもあった。むしろ、尖閣沖衝突事件中国社会での受け取り方には直接的にはこちらの文脈に置かれている面もあった。19日付け時事「日の丸燃やし抗議=柳条湖事件79年「国

  • 領有権=財産権、施政権=信託: 極東ブログ

    昨日書いた「尖閣諸島、領土と施政権」の続きのような話。識者がどこかにいるのだろうと思うが、わからない。しかたない、自分の頭で考えよう。愚考である。 尖閣諸島問題について、国内には外務省の公式見解を含め、各種の議論がある。が、それはほとんど領土問題を扱っている。つまり、領有権がどこにあるかを議論している。また、中国台湾もつねに領土問題として扱っている。だが、米国はこの問題を一度として領土問題としては扱っていない。あくまで施政権の問題だとしている。 米国の立場は、この点では、日を叩きつぶした連合国、つまり、国連の立場と同じだと見ていい。だから、国際世界としては、暗黙裡にこの問題を施政権の問題だとしているわけだ。なのに、日で、この問題をきちんと施政権の問題として議論しているのを私は知らない。なぜなのだろうか。私が無知というだけなら、それでもいい。だが、日人は、施政権という考えをまるで理解

  • 民主党政権が廃した事務次官会議を民主党野田内閣で復活: 極東ブログ

    野田内閣が事務次官会議を復活させた。これもまた野田内閣の自民党化の一環のようにも見えるが、微妙な部分もある。 事務次官会議は、民主党政権では、鳩山内閣時代には廃止されたが、菅内閣時代では震災対応の会議としてすでに事実上復活されていた。野田内閣はさらにそれをぐっと推し進めるということになる。 問題はわかりやすそうでわかりづらい。例えば、NHKのニュース「首相 官僚側に全面協力を要請」(参照)だが、これなどもわかりづらい。 野田総理大臣は、各府省庁の事務次官らを集め、政治家だけで世の中をよくすることはできないとして、政権運営に対する官僚側の全面的な協力を求めました。 総理大臣官邸で開かれた会議には、財務省の勝事務次官や外務省の佐々江事務次官ら各府省庁の事務次官ら16人が出席しました。 この中で野田総理大臣は「各省の皆さんは、試験を通じて公のために尽くそうという志を持って、この世界に入ってこられ

  • 極東ブログ

    中公新書の新刊とされている『ケマル・アタチュルク』の表紙を見たとき、ほんの数秒だが、私にはちょっとした混乱があった。「あれ?改版したのかな」と勘違いしたのである。「ケマル・アタチュルク」という表題のインパクトが強く、その上部に記されている著者の小笠原弘幸氏の名前にふとした失念があった。が、すぐに、「ああ、『オスマン帝国』の小笠原さんか」と思い出しつつ、書を開いた。 冒頭、「トルコ共和国の首都、アンカラ。その丘のひとつに建立された、巨大な廟がある。」と読むや、私も見た、壮大なアタチュルク廟の思い出が蘇った。 書を見たときの、この、自分の、わずかだが、混乱の理由は、「すでに中公新書には大島直政氏の『ケマル・パシャ伝』があるではないか?」と連想したからである。勘違いである。それは新潮選書であり、大島直政氏の中公新書の書籍は『遠くて近い国 トルコ』である。この新書は1968年の刊と古く、先の新

  • 誰が弱者か?: 極東ブログ

    2ちゃんねるのまとめサイトだろうか、「どっちが弱者ですか?」(参照)というネタが上がっていた。ネタだというのは一目見ればわかるが、この絵はちょっと奇妙な後味を残す。誰が弱者か?という難問の、どこかしら質を突いているからだろう。 5人の人がいる。左から。 (a)貯金4000万円の働かなくても年金生活の老人。 (b)年収300万円の疲れ切ったブラック会社員。 (c)年収250万円の派遣社員。 (d)年収200万円のフリーター。 (e)旦那が年収1000万円の専業鬼女。 もちろん、ネタ元の「あなたの優しさで席をゆずりましょう」というときは、妊婦(e)や老人(a)に席を譲ろうという話だったのだが、これを「弱者」に問題をすり替えたとき、譲られるべき老人(a)も妊婦(e)も社会的な「強者」ではないのかというアイロニーである。 もちろん、とまた言うが、この局面では座っている権利を持っている人が身体的な

  • シリア情勢が一線を越えた。化学兵器流出の危険。: 極東ブログ

    シリア情勢が一線を越えたようなので、少し言及しておきたい。一線とはなにかというと、化学兵器流出の危険である。 世界情勢を見つめていて、非道なものだなと思うのは実際に情勢が動き出すのは人道的な危機ではなく、特定の危機の構造である。中東問題で言うなら、あまり端的に言うのもなんだが、サウジアラビアかイスラエルへの脅威が構造的に形成される契機が重要になる。米国が気で動き出すのは、この二国の安全保障上の、繰り返すが、構造的な危機の可能性である。今回の一線ではイスラエル側にある。化学兵器がイスラム過激派や反イスラエル運動の組織に渡ると、イスラエルで大量殺人が起きかねない。イスラエルが気になりつつあり、当然米国を巻き込むという構図になる。 日ではあまり報道されていないので正確な議論をするのは難しいため、飛躍的な結論のように聞こえるだろうが、現下のシリア危機だが、当初は基的にサウジアラビアとイラン

  • じゃあ、今日は、イジメの話をしよう。: 極東ブログ

    じゃあ、今日は、イジメの話をしよう。あ、そこでぐったりしている男子、たぶん、君が想像している話をはちょっと違うと思うよ。「「しがらみ」を科学する」(参照)というにある話をちょっとアレンジしただけなんだけどね。 まず、30人のクラスを想定しよう。ちょうど、このクラスと同じだ。そこで3人グループが1人の生徒にイジメをしていて、残り26人はイジメが発生していることを知っているとしよう。こういう状況があったとき、どうするかな? またぐったりしないって。みんなでイジメを無くしましょうとかいうお説教じゃないんだ。数字に注意を払ってほしいんだ。 この設定でイジメを傍観している生徒数は……26人。この26人は、イジメの状況をどう考えているだろうか? おれもイジメに参加したい、と思うかな。まあ、それはないとしよう。でも、おれには関係ないし、って思う人は当然いるだろう。そういうとき君たちならどうかな? はい

  • 国会の壮絶な茶番の陰で繰り広げられている対決: 極東ブログ

    昨日の国会は壮絶だった。これまで国会の怒号・乱闘だの深夜の牛歩だとフルコースでひどいものを見てきたと思っていたが、昨日は格別の一品だった。そもそも国会の体をなしてなかった。定員削減の司法判断を反映しないからそもそも違法だという斜め上の話ではない。まずもって国会が国民代表の熟議の場になっていないのである。国会の議論でも民主党党内の議論でもなく、党間の密談でやっちゃえって、なんですか、これ。 戦前の大政翼賛会ってこういうものだったのだろうなと感動を新たにしたのだった。 マニフェストを自ら堂々とご破算にした民主党は今後どんな政策を打ち出してもギャグにしかならないから、もう二度と国政に復活する目はないと思う。麻生さんがあれだけ景気に配慮していたのにそれを忘れて、弾力条項打ち消した消費税増税をそのまま飲む自民党も、自滅。なにが野党だよ。政権受け皿になってないじゃん。 こんな国会には参加できないとして

  • 音引きと促音をやめるとジャパニーズ・イングリッシュ臭さが抜ける: 極東ブログ

    昨日のついで英語の発音の話。このネタ、他所で見かけたことがないので、ちょっと書いておこう。どういうことかというと、音引きと促音をやめるとジャパニーズ・イングリッシュ臭さが抜ける、という話。何、それ? 皆さんご存じだと思うけど、確認から。音引きというのは、伸ばし音。長音ともいう。たとえば、「おばーさん」の「ー」が音引き。そして、促音というのは、詰まる音。例えば、「がっかり」の「っ」のところ。 これがどうして英語の発音に関係するのか。関係するんですよ。簡単にいうと、英語には長音も促音もないのに、日人が英語で発音するとこれ無意識に入れちゃいがち。ちょっくら説明しみよう。 英語に長音はない 車(car)は「カー」。The internetは「インターネット」。印刷機(printer)は「プリンター」。少女(girl)は「ガール」。「スポーツ」(sports)。というように、英語をカタカナで表現す

  • 極東ブログ

    中公新書の新刊とされている『ケマル・アタチュルク』の表紙を見たとき、ほんの数秒だが、私にはちょっとした混乱があった。「あれ?改版したのかな」と勘違いしたのである。「ケマル・アタチュルク」という表題のインパクトが強く、その上部に記されている著者の小笠原弘幸氏の名前にふとした失念があった。が、すぐに、「ああ、『オスマン帝国』の小笠原さんか」と思い出しつつ、書を開いた。 冒頭、「トルコ共和国の首都、アンカラ。その丘のひとつに建立された、巨大な廟がある。」と読むや、私も見た、壮大なアタチュルク廟の思い出が蘇った。 書を見たときの、この、自分の、わずかだが、混乱の理由は、「すでに中公新書には大島直政氏の『ケマル・パシャ伝』があるではないか?」と連想したからである。勘違いである。それは新潮選書であり、大島直政氏の中公新書の書籍は『遠くて近い国 トルコ』である。この新書は1968年の刊と古く、先の新

  • 3分間でLとRの発音をテケトーにマスターする: 極東ブログ

    たまたま、はてなブックマークで「はてなブックマーク - 3分でLとRの発音を完璧にマスターできる5つの音声トレーニング | わいわい英会話」(参照)というのを見た。私が見たときは400くらいブックマークがついていた。人気が高いと言えるのではないかと思う。ネットとかで英語を学びたい人は多いのだろう。その程度の印象でいつもならこうした話題は通り過ぎて、元記事を開くことはないが、タイトルの「LとRの発音を完璧にマスター」を見てつい、そうだなあ、あれは意外に難しいんだよなと思ったので、どう教えているのか元ネタ(参照)を開いてみた。ざっと目を通して、え?と思った。 簡単にいうと、ダークエル(dark L)の解説がなかった。このサイトの他の部分で説明されているのかもしれないが、英語のエル(L)の発音を学ぶときには、ライトエル(light L)とダークエル(dark L)を区別したほうがいい。いや、非英

  • 河本準一さんをめぐる生活保護費の不正受給疑惑について: 極東ブログ

    お笑いコンビ「次長課長」の河準一さん(私はこの人全然知らないのだけど)の母親に生活保護費が不正受給されていたのではないか、とする疑惑問題がツイッターで沸騰していた。何かが発動しているんだな、なんなんだろうかと、蟻の生活を観察するように(参照)眺めてみた。よくわからないせいか、自分の印象は浮きまくった。うむ。だったら異論の一つとしてブログに書いてみてもいいんじゃないか。ごく簡単に書いてみたい。 当の疑惑問題だが、NHK的にはこうまとめていた。「河準一さん 生活保護費返還へ」(参照)より。読むとわかりやすい口調でありながら、「それって不正なの?」という構図は、いい案配にボカされている。 この問題は、テレビや舞台などで活躍する河準一さんが一定の収入があるにもかかわらず、母親が生活保護を受けていると、先月、週刊誌で報じられ、批判されていたものです。 河さんは25日、東京都内で記者会見を開き

  • ブログはどこまで嘘をついていいのか: 極東ブログ

    まあ、話題の虚構新聞の「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」(参照)について、私も結局釣られるということなんだが、ネットでは話題といっても知らない人もいるだろうと思うので、概略から、で。 試しに、グーグルニュースでこの件を検索したらエックスドロイドというサイトの「「虚構新聞に怒る人はバカ」とひろゆき氏が断言」(参照)という記事があって、ざっと読んだら、それがわかりやすいように思えたので、概要の代わりに引用。 現実の事件や出来事のパロディ記事を配信するジョークサイトとして有名なのが「虚構新聞」。個人サイトとは思えないPVを叩きだしており、一昨年に今までのネタを集めた単行『号外!!虚構新聞』(笠倉出版社)が発売されるほどの人気サイトだ。 記事には背景色に隠れた文字を反転させると「これは嘘ニュースです」と書かれており、虚構新聞というサイト名からもジョークであることは分かるのだが、「あ

  • [書評]円高の正体(安達誠司): 極東ブログ

    はなぜ円高なのか。ずっと円高基調が続いているので疑問に思わなかったり、欧米での金融危機との関連で考える人もいるだろう。だが、円高のもっとも基的な要因は何か、またそれがどういう意味を持つのかと考えるなら、書「円高の正体」(参照)の解説がわかりやすい。 なにより重要なことは、日の円高という現象がデフレの別相であることも明らかにしている点だ。その意味では書の書名は「デフレの正体」と言ってもよいだろう。その書名をもって広く読まれた別の書籍の主張(人口減少によるとする主張)が間違っていることも示されている。 書は円高の仕組みを解説するだけに留まらず、日にとって「良い円高」なるものが存在しないということを詳しく説明した後、円高の別相であるデフレの解消のための金融緩和政策に日銀行が強く志向することも求めている。 その点では、書はいわゆるリフレ派と呼ばれる立場の主張を、新書の形式で手短

  • [書評]自由はどこまで可能か―リバタリアニズム入門(森村進): 極東ブログ

    副題に「リバタリアニズム入門」とあるが書「自由はどこまで可能か(森村進)」(参照)は、学術レベルに対する入門という意味合いで、内容はかなり濃く、いわゆる新書にありがちな入門書ではない。 後半になると著者森村氏の見解がやや突出する違和感があるが、総じて現代のリバタリアニズムを俯瞰して理解するには最善の書籍と言える。その分、簡単には読めない。不必要に難解な書き方も悪しき学術的な書き方もされてなく読みやすい文体なのだが、一見簡素な思想に見えるリバタリアニズムが投げかける質的な課題を考えつつ読むことが難しい。 何度も繰り返し読むに耐える書籍でもある。出版は2001年と古く、やや現代の古典といった風格もあり、この間のリバタリアニズム思想の展開も気になるところだが、とにかく書を出発点にしないことには話にもならないだろう。 リバタリアンとは何か。書は、類似または対比される思想的立場との違いを次の

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