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ブックマーク / user.keio.ac.jp/~rhotta (8)

  • #3294. ''occupy'' は「オカピー」と発音しない

    英語史の授業の学生が提供してくれた話題.study と occupy は綴字の構成が似ているために,後者を「オカピー」と発音している学習者や先生(!)がいたという話しである.思ってもみなかった発音で,英語の綴字と発音の関係について深く考えさせる事例である./ˈɒkjuˌpaɪ/ と読めるほうが変ではないか,という感想にも一理ある. まず,参照ポイントとなった study /ˈstʌdi/ からして,綴字と発音の関係が不規則である.この綴字では <d> が1つのみなので規則的には */ˈst(j)uːdi/ となるはずのところだが,あたかも *studdy と綴ったかのような発音になっている (cf. student /ˈst(j)uːdənt/).実際 <dd> と子音字を重ねた綴字も中英語から見られるが,後に標準となったのは <d> 1つの綴字だった.したがって,occupy についても

  • #3146. 言語における「遺伝的関係」とは何か? (1)

    歴史言語学において,共通祖語をもつ言語間の発生・発達関係は "genetic relationship" と呼ばれる.来生物学に属する "genetics" という用語を言語に転用することは広く行なわれ,当然のものとして受け入れられてきた.しかし,真剣に考え出すと,それが何を意味するかは,まったく自明ではない.この用語遣いの背景には様々な前提が隠されており,しかもその前提は論者によって著しく異なっている.この問題について,Noonan (48--49) が比較的詳しく論じているので,参照してみた.今回の記事では,言語における遺伝的関係とは何かというよりも,何ではないかということを明らかにしたい. まず力説すべきは,言語の遺伝的関係とは,その話者集団の生物学的な遺伝的関係とは無縁ということである.現代の主流派言語学では,人種などの遺伝学的,生物学的な分類と言語の分類とは無関係であることが前

  • #2112. なぜ3単現の -''s'' がつくのか?

    標題は,英語学習者が一度は抱くはずの素朴な疑問の代表格である.現代英語では動詞の3人称単数現在形として語幹に接尾辞 -(e)s を付すのが規則となっている.(1) 主語が3人称であり,(2) 主語が単数であり,(3) 時制が現在であるという3つの条件がすべて揃ったときにのみ接尾辞を付加するという厳しい規則なので,英語学習者にとって習得しにくい(厳密には (4) 直説法であるという条件も必要).私自身も,英語で話したり書いたりする際には,とりわけ主語と動詞が離れた場合などに,規則で要求される一致をうっかり忘れてしまう.3単現の -s とは何なのか,何のために存在するのか,と学習者が不思議に思うのは極めて自然である. 現代英語における3単現の -s の問題は奥の深い問題だと思っている.共時的な観点からは,動詞の一致という広範な現象の一種として,種々の議論や分析がなされうる.形式主義の立場からは

  • hellog〜英語史ブログ

    お知らせ 2024年11月30日(土)17:30--19:00,朝日カルチャーセンター新宿教室にてシリーズ講座「語源辞典でたどる英語史」の第8回「英語,オランダ語と交流する」が開講されます.ご関心のある方は,リンク先よりお申し込みください.2024/10/27(Sun) お知らせ 2024年度,白水社の月刊誌『ふらんす』に「英語史で眺めるフランス語」というシリーズタイトルで連載記事を寄稿しています.10月25日に刊行された11月号に連載第8弾が掲載されています.詳しくは hellog の関連記事「#5662. 英語の慣用表現にみるフランス語の影 --- 月刊『ふらんす』の連載記事第8弾」をご覧ください.2024/10/27(Sun) お知らせ 2024年9月8日に khelf による『英語史新聞』第10号がウェブ上に一般公開されました.こちらからPDFでご覧になれます.hellog でもこ

  • #2933. 紙の歴史年表

    カーランスキーの著わした『紙の世界史』は,書写材料としての紙の歴史をたどりながら,結果として文字と文字文化歴史を同時に記述している.書写材料については,「#2465. 書写材料としての紙の歴史と特性」 ([2016-01-26-1]),「#2456. 書写材料と書写道具 (1)」 ([2016-01-17-1]),「#2457. 書写材料と書写道具 (2)」 ([2016-01-18-1]) などで扱ってきたが,今回はカーランスキーの巻末より紙の歴史年表 (466--74) を掲げたい.一覧するとテクノロジーが社会を動かしてきたことがよく分かるが,カーランスキーの言葉を借りれば「社会がテクノロジーを生み出してきた」というべきなのだろう.

  • #2872. 舌打ち音とホモ・サピエンス

    舌打ち音あるいは吸着音 (click) という特殊な言語音をもつ言語が,主としてアフリカ南部に集中して分布しているという事実は,言語学者のみならず人類学者や民族学者の関心を引きつけてきた.舌打ち音の音声学的な記述について「#1672. 気流機構」 ([2013-11-24-1]) で,地理的な分布について「#1314. 言語圏」 ([2012-12-01-1]) で部分的に扱ってきたが,今回はその起源についての言及を集めてみた.いずれも必ずしも専門的な観点とは言えないかもしれないが,1つの洞察として示しておきたい. 一般向けの宇宙史を著わしたロイド (130) は,現在のタンザニア奥地に住む狩猟採集民ハザ族の言語について,専門家による次のような意見を参照している. 一部の専門家は,ハザ族の言語,少なくともその形態は,石器時代の初期の言語に近いのではないかと考えている.ハザ族の言語はほとんど

  • #1047. ''nice'' の意味変化

    英単語の意味変化としてよく知られているものが,いくつかある.[2010-08-13-1]の記事「#473. 意味変化の典型的なパターン」では,古典的な意味変化の類型にしたがって例をいくつか挙げたが,意味の良化 (amelioration) の代表例の1つとして nice を挙げた.評価を伴う形容詞は,「#505. silly の意味変化」 ([2010-09-14-1]) や「#742. amusing, awful, and artificial」 ([2011-05-09-1]) で挙げた語のように,意味を著しく,時には正反対へと変化させることがあるが,この nice も有名な例である. 現代英語の nice は「よい,すてきな;親切な」の意味で頻用されるが,元をたどると古フランス語 nice "simple, stupid, dull" の1300年頃の借用であり,当初の意味は古フラ

  • #2417. 文字の保守性と秘匿性

    文字を利用する書き言葉という媒体は,話し言葉に対して保守的である.このことは,これまでの文字や書き言葉に関する記事において前提としてきた.これについては,例えば「#15. Bernard Shaw が言ったかどうかは "ghotiy" ?」 ([2009-05-13-1]),「#753. なぜ宗教の言語は古めかしいか」 ([2011-05-20-1]),「#2292. 綴字と発音はロープでつながれた2艘のボート」 ([2015-08-06-1]),「#2405. 綴字と発音の乖離 --- 英語綴字の不規則性の種類と歴史的要因の整理」 ([2015-11-27-1]) を参照されたい. 文字には,保守性に加えて,特に古代においては秘匿性があった.文字の読み書き能力は,特権階級にのみ習得の認められた秘密の技能であり,それは権力や威信の保持にもあずかって大きかった.また,世俗的な権力と宗教的な威

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