談合事件の新聞報道をめぐる名誉毀損(きそん)訴訟で、訴えられた日本経済新聞社が捜査幹部の実名を挙げて取材源を明らかにしたことが判明し、議論を呼んでいる。「取材源の秘匿」は、日本新聞協会の見解や最高裁決定でも重要性が認められた報道の大原則だ。有識者からは報道倫理の観点から日経側の対応に批判が集まる一方、報道機関が取材源を明示しなければ敗訴するケースも多い名誉毀損訴訟の立証のあり方にも疑問の声が上がる。(前田武)取材メモを提出 問題となったのは、大阪府枚方市が平成17年に発注した清掃工場建設工事の入札をめぐる談合事件に関連した新聞記事だ。 この事件では、大阪地検特捜部が19年、当時市長だった中司宏被告(56)=談合罪で1、2審有罪、上告中=や副市長、大手ゼネコン幹部(いずれも当時)ら計6人を逮捕した。1審大阪地裁で副市長は無罪、ほかの5人は有罪の判決を受け、上告中の中司被告以外は確定している。