全部ナッシングだと言ってしまえる文章が必要だった 分厚い化粧で武装しなければならなかった私の若い頃より、もしかしたら今の若い女の子は、不安を口にできる強さを身につけたのかもしれません。そう思うことは節々にあります。それでも、拙い言葉と幼稚なセンスでする表現には限界があって、だからこそ、女子高生には自分らの中から発せられるわけではない言葉も必要だと思ってしまうのです。『桃尻娘』の主人公が、生理が始まる前を懐古してこんな風に言う場面が好きです。「あたしだってそうなるんだって分ってだけど、分ってたからこそ許せなかったの、あたしも同じだっていつも鼻先で見せつけられてる気がして、あたし達はいつもそんな子を仲間外れにして遊んでたわ。」 黒スプレーをべったり振りかけたガビガビの髪を思い出すまでもなく、若いときってどんな人でも自分にべったりくっつけられた価値を居心地悪いと思って、早くオトナになりたいなんて
![(4ページ目)鈴木涼美 不相応な値段がつけられた女子高生は、その無意味を証明したかった(橋本治『桃尻娘』を読む)|連載|中央公論.jp](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/d0b6c21240883c43d8b166209161b50ef49ecb87/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fchuokoron.jp%2Fassets_c%2F2021%2F06%2Fd9969ef6f587f685812cc673896211e07904ea7b-thumb-1200xauto-18606.jpg)