人口問題の解決は日本の喫緊の課題である。 少子化による市場の縮小、生産年齢人口の減少、急速な高齢化による社会保障の増大に対し、政府は高齢者の雇用や需要喚起政策、金融政策など様々な対応を図っている。 だが、それらが有効に機能せず、根本的解決に至っていないのは何故なのだろうか? この問題を考える上で『人口の経済学 平等の構想と統治をめぐる思想史』は多大な示唆を与えてくれる。人口をめぐる経済学者の思想史を振り返ると、いったい何が見えてくるのだろうか? ここでは、経済学の創始者と呼ばれるアダム・スミスの人口論について考える。 (※本稿は、野原慎司『人口の経済学』を一部再編集の上、紹介しています) 経済・人口増加の原動力の認識転換―-不平等から平等へ スミス(1723-90年)は、経済の制度的基礎に関心をもっていた。その関心は、彼が自らの経済学を「立法者の科学」と捉えたことでも端的に示される。 重商