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ブックマーク / honz.jp (34)

  • 地を這う新型コロナウイルス禍メモワール、60職種77名による『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』 - HONZ

    作者:尾崎 世界観 ,町田 康 ,花田 菜々子 ,ヤマシタ トモコ ,川 三郎 ,立川 談四楼 他77人 出版社:左右社 発売日:2020-06-23 新型コロナウイルス、誰一人として影響がなかった人はいないだろう。しかし、その影響の受け方は、それぞれの人によって違う。いまさらながら、そのことがよくわかった。 緊急事態宣言が出された4月7日あたりから、ゴールデンウィークの頃まで。総勢77名の人たちによる日記である。どのように依頼されたのか、どのように編集されたのかは定かでない。ひとりあたりのページ数は似たり寄ったりだが、形式や文体はまちまちだ。毎日こまめに書いている人もいれば、長いのを数日分の人もいる。中には漫画もある。プロの作家から市井の人までさまざまな書き手だが、みんな上手い。 いろんな仕事に降りかかった出来事について、新型コロナウイルスの影響が報道された。しかし、どうしたって他人事

    地を這う新型コロナウイルス禍メモワール、60職種77名による『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』 - HONZ
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    nagayama 2020/07/02
  • 『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実 - HONZ

    書は62歳で「住所不定無職」の新人作家として鮮烈なデビューを果たした作家、赤松利市が経験した、東日大震災の復興事業に関するルポルタージュだ。 著者、赤松は35歳で起業し、一時は年収2000万円を超えていた。しかし、ある事情により会社は倒産。以後、厳しい生活を強いられる。 そんな折、東日大震災が発生。土建業を営む知人の社長から相談を受ける。震災後の復興バブルに乗るべく専務である息子を東北に派遣するので、「営業部長」となって同行してほしい、儲けが出れば半分は赤松の取り分にするという内容だ。土木業は未経験だが、儲けを出せば利益の半分を手にできる。人生逆転のチャンスだ。そう思い仕事を引き受ける。 だが、そのもくろみはすぐに崩れさる。復興バブルに便乗するべく東北に集った零細企業たちが、大手ゼネコンのように現場全体を請け負うことは不可能だ。零細企業は、大手が請け負った現場に作業員を派遣する、人工

    『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実 - HONZ
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    nagayama 2020/06/10
  • 主人公は君だ『2020年6月30日にまたここで会おう』 - HONZ

    2019年8月に病のため47歳の若さで亡くなった瀧哲史さん。彼はずっと若者世代である「君たち」にメッセージを送り続けてきた。『2020年6月30日にまたここで会おう』は、瀧さんが2012年に東京大学伊藤謝恩ホールで行った講義を1冊にまとめたものだ。生徒の参加資格を29歳以下に限定し、全国から約300人の10代・20代が集結したという。2時間にわたる講義の内容が収められている。 当時10代・20代だった人だけでなく、このは多くの人に読んでほしい。タイトルをみるだけでは、いったい何のだかわからないかもしれない。2012年に行われた講義をまとめたのはずなのに、このは20年代を生きるために必要な武器を与えてくれるになっている。こんなに胸を熱くさせ、そして読んでいて涙したにはひさしぶりに出会った。 瀧さんには個人的にも大変お世話になっている。書店員時代、デビュー作の『僕は君たちに武

    主人公は君だ『2020年6月30日にまたここで会おう』 - HONZ
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    nagayama 2020/05/29
  • 『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ

    あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書かれた多くのノンフィクションの中でも出色の一冊だ。 書の優れている点。それはプロフェッショナルの証言に基づいているところだ。私たちは現実を見ているようで、案外見ていない。事故現場の取材で目撃者に話を訊くと、「とにかく驚いた」とか「ドカーンと音がして気がついたら倒れていた」とか、目の前で起きたことを描写するのではなく、単なる感想や擬音で雰囲気だけを伝えるケースがよくある。無理もない。私たち素人は、想定外の出来事を前にすると動転してしまうの

    『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ
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    nagayama 2020/02/17
  • 皆ひとしく、その時に向かっている 『エンド・オブ・ライフ』 - HONZ

    何もない土曜日。我が家で最初に「行ってきます」を言ったのは、84歳の母だった。朝8時、迎えに来たデイサービスの車に車椅子のまま乗り込んでいった。そしてさっき、「お年玉でオモチャを買いたい」という息子と「友達の誕生日プレゼントを買いたい」という娘を連れて、が出ていった。そして、私は一人リビングに残された。 早速、昨日泣きながら読んだ書『エンド・オブ・ライフ』の素晴らしさを多くの人に伝えようと、パソコンを立ち上げた。当然だが、原稿というのはいずれ書き終える時がくる。そういうものだ。今回は、その最後の一文をどんな気持ちで書き終えるだろう。笑顔と拍手で終えられるだろうか。それは、今をどう生きるか(どう書くか)、にかかっている。 そう考えると、今この瞬間の中にも、生と死があることに気づく。このは終末医療を扱ったノンフィクションだが、私が書を全ての人にお薦めしたい理由はそこにある。ここに書かれ

    皆ひとしく、その時に向かっている 『エンド・オブ・ライフ』 - HONZ
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    nagayama 2020/02/10
  • 『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは - HONZ

    厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年4月の国立社会保障・人口問題研究所の将来推計に比べると、人口減少ペースは2年も早まっている。 未来予測の中で最も確度が高いのが人口予測であるというのは、未来学者(フューチャリスト)のピーター・ドラッカーが以前から指摘していたことであり、人口の大幅な減少が今さら話題になるというのもおかしな話ではある。これだけ長期にわたる経済停滞が続き、社会がこれだけ若者と女性を痛めつければ、その結果がどうなるかは誰でも分かりそうなものだが、分かっていても

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    nagayama 2020/01/06
  • 『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』 - HONZ

    ブレイディみかこが『THIS IS JAPAN』を著してから3年。アメリカではトランプが大統領となり、イギリスではメイに代わってボリス・ジョンソンが首相となった。停滞、格差、分断がキーワードとして繰り返し取り上げられる中、旧来の「右vs.左」とは異なる「上vs.下」の構図が、瞬間的には描かれる。しかしすぐさま、人々の高まった不満は、ポピュリズムの構図へと着地する。 ポピュリズムはそれ自体、悪ではない。衆愚政治や大衆迎合と訳されることもあるが、直訳すれば大衆主義となる。「エリートたちの政治はうまく機能しておらず、我々の不満を解消できていない」。このようなリアリティから唱えられる反エリート主義は、人々の政治的関心を高め、動員に成功する。 問題は、そのポピュリズムが何と結びつき、どこにいくか、だ。反移民と自国第一主義との結びつきは、今や欧米各国で観測できる。他方で、反貧困・福祉強化を訴えるサンダ

    『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』 - HONZ
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    nagayama 2020/01/06
  • 『しらふで生きる 大酒飲みの決断』生きることは寂しい、だからこそ酒を断つ - HONZ

    30年間毎日欠かさずに酒を飲み続けてきた作家、町田康の断酒エッセーである。こう書くと酒をやめて健康になった暮らしぶりを健やかにつづったエッセーを想像してしまうが、決してそんな生易しいものではない。 その証左としてまずは目次からいくつかの見出しを引用してみよう。〈飲酒とは人生の負債である〉〈私たちに幸福になる権利はない〉〈「私は普通の人間だ」と認識しよう〉〈「普通、人生は楽しくない」と何度も言おう〉〈「自分は普通以下のアホ」なのだから〉と畳みかけてくる。目次の時点で強烈なジャブをらわされる。 そもそも著者はなぜ酒をやめると決断したのだろうか。何しろ自他共に認める大酒飲みで、古代の政治家・歌人・酒飲みである大伴旅人と、彼が詠んだ「酒を讃(ほ)むる歌十三首」のみを信じて酒を飲み続けてきたような男なのだ。当然読者が気になるであろう、この問いに対する著者の答えは「気が狂ったからである」というものだ

    『しらふで生きる 大酒飲みの決断』生きることは寂しい、だからこそ酒を断つ - HONZ
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    nagayama 2019/12/17
  • 『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー - HONZ

    『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー ある日を境に急に有名人になってしまうなんて経験、そうそうないだろう。だがソフィーとアンディの人生にはそのめったにないことが起きた。書は、しなやかな発想で世界を驚かせた女子高校生2人の成長物語である。 ソフィー・ハウザーは、授業中に手を挙げて発表することにもおびえるほどの極度のあがり症だ。気楽に自分を表現できる場は日記か親友の前だけ。そんな彼女は、スタートアップ企業で働く兄の影響でプログラミングに興味を抱く。 一方、アンドレア(アンディ)・ゴンザレスは、お金に苦労した両親が子どもたちの教育に力を入れた影響で、幼いころから優等生だった。だがその一方でプレッシャーも感じていた。両親は医者か弁護士、エンジニアを目指せと言う。その中でアンディがなりたいのはエンジニアだった。

    『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー - HONZ
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    nagayama 2019/11/05
  • 『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい - HONZ

    『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい 書のタイトルから、まずわかることは、子どもが思い通りに育ってくれたらいいなという期待、思い通りに育てたいという欲望があるということだろう。それは、なぜだろうか? 急がば回れ、その背景にある社会動向の変化を見てみよう。昨今、親になった世代は充実した教育を受けてはいるものの、子どもの世話をした経験はほとんどないという状況だ。家族構成の変化、要するに核家族化が進んだことが影響している。核家族以前はおばさんおじさんが家にいて、年の離れた兄弟もおり、親族が近くに住み、身近に誰かが子育てをしている状況があった。子どもの頃から日常の風景から自然と見て学び、ときに子守をすることで子育ての一部を体験していた。 しかし、核家族では自分が結婚し、子どもを産んでからがはじめての子育てになる。コミュニティにつ

    『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい - HONZ
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    nagayama 2019/09/27
  • 「ついで」に回す香港のアングラ経済 『チョンキンマンションのボスは知っている』 - HONZ

    重慶大厦=チョンキンマンションをご存じだろうか?知る人ぞ知る香港の九龍・尖沙咀地区にある個人住宅がメインの複合ビルで、香港の魔窟と呼ばれることもある。ウィキペディアによると、そこには、南アジア・中東・アフリカなど、さまざまな国の出身者によるコミュニティーがあるらしい。そして、香港在住のタンザニア人たちも、夜な夜な何をするともなく集まってくる。 チョンキンマンションのボス、といってもオーナーなどではない。このは、自らがチョンキンマンションのボスと名乗るタンザニア人・カラマをめぐるノンフィクション、文化人類学者・小川さやかによる密着取材ドキュメントである。 カラマは、月に2万4千米ドルも稼ぐことのある凄腕ビジネスマンだ。しかし、稼げない月もある。そんな時でも、おだてられると見知らぬ若者にまで気前よく奢ってしまい、生活費を借りるはめになる。 おしゃれ好きで、次々と新しい服を買うが、着た後は洗濯

    「ついで」に回す香港のアングラ経済 『チョンキンマンションのボスは知っている』 - HONZ
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

    『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ
  • 『Bullshit Jobs: A Theory(洋書)』どうでもいい仕事を理論化する - HONZ

    経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946年)は、 1930年に”Economic Possibilities for our Grandchildren(孫の世代の経済的可能性)”というエッセイの中で、イギリスやアメリカのような先進国では、テクノロジーの進化によって20世紀末までに週15時間労働が実現しているだろうと予言した。(”Essays in persuasion(ケインズ 説得論集)”) ケインズの指摘する通り、確かにテクノロジーは大いに進化したものの、結局、この予言は当たらなかった。ロンドンスクール・オブ・エコノミクス(LSE)の社会人類学教授のデヴィッド・グレーバーは、その理由を、テクノロジーがむしろ無意味な仕事を作り出す方向に使われたからだと説明する。 グレーバーは、”We are the 99%(我々は99パーセントだ)”というスローガンで行われた、201

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    nagayama 2018/07/27
  • 『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』そこは大人の幼稚園だった! - HONZ

    大学に関するノンフィクションは数あれど、藝大がテーマというのも珍しいなと思い読み始めたのだが、中に登場する人物たちは、もっと珍しかった。まさに珍獣、猛獣のオンパレードである。 舞台となる東京藝大は上野にキャンパスがあり、芸術家を志すものたちにとっての最高学府である。上野駅を背にして左が美術学部で、右が音楽学部。美術と音楽、二つの芸術がまさにシンメトリーのように共存しているのが、特徴の一つだ。 まるで町工場のような美校の校舎と厳格なセキュリティに管理された音校の校舎。ほぼ全員遅刻の美校と、時間厳守の音校。なんでも作ろうとする人と、洗い物さえしない人。何もかも自前で飲み会をする人と、鳩山会館で同窓会をする人。 普通なら交わることのなかった両者が、同じ校舎に通う。それが東京藝大なのだ。 著者は、現役の藝大生を伴侶に持つラノベ作家。一緒に暮らしていく中での、あまりに不思議な暮らしぶりに興味を持ち、

    『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』そこは大人の幼稚園だった! - HONZ
  • 集団はどうして愚かな結論に至ってしまうのか 『賢い組織は「みんな」で決める リーダーのための行動科学入門』 - HONZ

    「三人寄れば文殊の知恵」という。たしかに多くの場合、何人かでアイデアを出しあえば、ひとりで考えるよりいい決断に至ることができる。しかしその一方で、いつもそうとはかぎらないこともわたしたちはよく知っている。みんなで考えたのに愚かな結論に至ってしまった、いやむしろ、みんなで考えたからこそ愚かな結論に至ってしまった――そんなケースに誰もが思い当たるふしがあるのではないだろうか。 だがそうだとしたら、集団で考えるとどうしてしばしば失敗してしまうのか。そして、どうしたら集団としてより賢くなれるのか。それらふたつの問題に、書は行動科学の知見を用いながら迫っていく。 書の特色は、「集団のメンバーからいかに有益な情報を吸い上げるか」という視点から上記の問題を考えているところにある。集団の全メンバーが持つ情報を足し合わせると、その情報は、そのうちのひとりが持つ情報よりもつねに多い。よって、素朴に考えれば

    集団はどうして愚かな結論に至ってしまうのか 『賢い組織は「みんな」で決める リーダーのための行動科学入門』 - HONZ
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    nagayama 2016/09/10
  • 『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ

    前作『代替医療解剖』の発表から実に8年。人気サイエンスライター、サイモン・シンの最新作の翻訳版がついに完成しました。テーマはズバリ『ザ・シンプソンズ』。1989年の初放映からすでに600話超! 今も続くアメリカの大人気アニメーションです。黄色い肌に、大きなギョロ目、極端にデフォルメされた姿はきっと多くの人がご覧になっているはず。社会風刺のたっぷりきいたドタバタアニメは時に社会問題にからんで日でも話題に上ります。 でも今回の切り口は、風刺でもなければアニメ論でもありません。『ザ・シンプソンズ』、実は超難解「数学コメディー」だった!! というサイモン・シンならではのものです。この背景にはハーバード大などで数学の博士号を取得した「天才」たちが、研究職をなげうってまで『ザ・シンプソンズ』の脚家になったという、驚くべき事実があるのですが、なぜ、そんなことが起こってしまったのか、そもそもどんな理由

    『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ
  • 読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 - HONZ

    多くの人間は一日に6〜8時間ほどの睡眠をとる。そうなると、ごくごく単純に計算して人生の4分の1から3分の1を睡眠に費やしていることになる。それなのに睡眠のことはあまり意識されない。あって当たり前、時にはちょっとぐらいすっとばしても構わないものだと思われている。 しかし、かつて安眠が今ほど保証されていない時代のことを考えれば、6〜8時間も睡眠をとるのはとてつもなく危険だったはずだ。その上、睡眠は人間だけではなく、動物界に広く行き渡った機能である。多くの動物がわざわざ多大な危険をおかしてまで行っているのだから、当然そこには「睡眠が生命を維持するに必要不可欠な理由」があるに違いない。そうでなかったらこれほど深刻なバグはなかなかないだろう。その理由とはいったいなんなのだろうか? 書『眠っているとき、脳では凄いことが起きている: 眠りと夢と記憶の秘密』はその書名通り、眠っている時に脳で起こっている

    読み終えたが最後、徹夜はできなくなるだろう──『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』 - HONZ
  • 『数学する身体』僕が身体で感じていたことは、嘘でも無駄でも無かったんだ - HONZ

    発売されるやいなや大きな反響を呼んでいる、『数学する身体』。お待ちかねの客員レビュー第三弾は、はてな株式会社の近藤淳也さんが登場。「数学は情緒だ」という独立研究者・森田真生の言葉を聞いた時、近藤さんが直感的に感じたものとは何だったのか? (HONZ編集部) ※客員レビュー第一弾、第二弾 森田くんが初めて書いた。「数学する身体」。 わざわざ「を届けたいので」と、会社の近くまで足を運んでくれて、ランチを共にしながら渡してくれた。 構想ができてから書き上げるのに4年かかったという。 もともと、文章を書くときにはとんでもなく集中して、丁寧に言葉を積み上げて、何度も何度も読んで味わえるような、スルメみたいな精緻な文章を書く森田くんが、初めて1冊のを書いた、という。 もうそれだけで、読む前から、これはすごいだ、ということは分かっていた。 すごいというのは、とにかく、中身云々の前に、通常で

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  • 『ぼくは物覚えが悪い』海馬を失った男は、永遠に続く30秒を生きた - HONZ

    今年も残すところあと1ヶ月となり、年忘れという言葉も聞こえてきた。皆さんにとって2014年はどのような年であっただろうか?そして来たる2015年のことを考えた時に、どのような感情が沸き上がってくるだろうか? 年の瀬ともなると、私たちは過去の出来事を頭の中で再現し、その情動を元に未来へ思いを馳せる。年を忘れるというくらいだから、辛かったことや不安な出来事を思い出す方も多いのかもしれない。いずれにせよ私たちは「今」という瞬間を疎かにするくらい、記憶というものに縛られながら生きている。それならば未来もなく過去もなく、現在進行形しか存在しない世界に行けば、不安を取り除くことは出来るのだろうか。 1953年、一人の男がてんかん治療のための脳手術を行った。左右の内側側頭葉を摘出するという実験的な手術であったものの、発作は無事に抑えられるようになる。しかしこの手術は、関わった全ての人にとって決して忘れら

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  • 『サイレント・ニーズ』新しい見方というシンプルな武器 - HONZ

    2008年7月、iPhoneが発売された。その時から凋落の一途を辿っていったのが、Nokiaの携帯電話事業である。2007年に最高益を達成した後は、「第3・4世代(3・4G)移動通信システムvsスマホ」におけるイノベーター・アップルの前にひれ伏すこととなる。そして、2012年には14年間に渡った販売数トップの座をサムスンに明け渡し、昨日、携帯電話事業をマイクロソフトへ売却した。 しかし、これまでNokiaが果たした携帯電話事業への功績は大きい。特に水道、道路、電気のインフラが十分に整っていない発展途上国で、携帯電話を売りまくってきたのである。一番の売れ筋商品であったNokia1100は、シンプルなデザインと限られた機能で累計2億5千台を販売したし、今では世界で半数以上の人が携帯電話を持っている。著者は、この携帯の普及をバックエンドで支えるリサーチ部門に所属していた。 2005年当時、使える

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