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ブックマーク / donoso.hatenablog.com (13)

  • 2023年の本 - Valdegamas侯日録

    例年通り新刊の振りかえりである。毎年、書き出しは色々と言い訳を書き連ねるのがならいであるが、2023年は公私ともに色々落ち着かず、読書への差し支えが顕著にあった。評判となったで買いはしたが読めなかったというも少なくない。諸般の状況を勘案し、今回は例年よりを絞り込んで取り上げることとした。 ■日政治・外交 境家史郎『戦後日政治史―占領期から「ネオ55年体制」まで』(中央公論新社[中公新書]) 中山俊宏『理念の国がきしむとき―オバマ・トランプバイデンアメリカ』(千倉書房) 竹内桂『三木武夫と戦後政治』(吉田書店) 『戦後日政治史』は副題通り、約80年の戦後政治史を300頁余りで描ききったもの。著者自身が断わるように、戦後政治理解の「筋書」を読者が得ることを目的としたで、簡潔で要を得た新書らしい新書という内容となっている。とはいえその記述は無味乾燥どころか特色を明確に持つ。5

    2023年の本 - Valdegamas侯日録
  • 2022年の本 - Valdegamas侯日録

    年末に一年を振り返り、どんな新刊を読み、何がおもしろかったかを投稿するだけとなって久しいブログだが、例年通りその投稿をする。 今年は少し読書の方法や時間の取り方が変わり、関心のあるをきちんと読む時間を比較的確保できた(とはいえリストのとおり、読めなかったも多い)。また昨年取り上げたが多くなりすぎてしまったという反省もあったことから、今年はこれらの点に留意して紹介を行うこととした。 基的に自分の場合、その時々の関心の束に合わせてまとめていくつかのを読むことが多い。これを反映して便宜的に「日政治」「基地問題」「外交史・政治史」「国際政治・比較政治」「回想録・伝記研究」という塊として、印象に残ったを紹介することとしたい。 ■日政治 ■基地問題 ■外交史・政治史 ■国際政治・比較政治 ■回想録・伝記研究 ■復刊 ■おわりに ■日政治 アジア・パシフィック・イニシアティブ編『

    2022年の本 - Valdegamas侯日録
  • 2021年の本 - Valdegamas侯日録

    年末に今年の新刊の振り返りをするのが個人的な恒例行事となって久しい。今年は多少自分なりに分野という脈絡をつけて扱うこととした。 ■外交史 外交史というより防衛・安全保障政策史というカテゴリがふさわしいが、まず取り上げたいのは真田尚剛『「大国」日の防衛政策―防衛大綱に至る過程 1968~1976年』(吉田書店)と千々和泰明『安全保障と防衛力の戦後史1971~2010―「基盤的防衛力構想」の時代』(千倉書房)の二冊である。1976年に初めて策定された「防衛計画の大綱」の策定過程、そして同大綱の基的考え方として、その後の度重なる改定の後も維持された「基盤的防衛力構想」の実態をそれぞれ分析したものである。 1980年代から2000年代初頭まで、大嶽秀夫『日の防衛と国内政治』、広瀬克哉『官僚と軍人』、室山義正『日米安保体制(下)』、田中明彦『安全保障』、佐道明広『戦後日の防衛と政治』など、

    2021年の本 - Valdegamas侯日録
  • 2020年の本 - Valdegamas侯日録

    過去のログを漁るとまるで言い訳の変遷がボージョレ・ヌーボーの評価のようであるが、当に今年もろくにを読まない一年であった。Twitterで報告したとおり、私事でも色々あり、世の中はコロナに見舞われた。在宅勤務が増える中で読書がはかどるかとも一瞬思ったのだが、そんなことはなく、人間は読書の習慣が鈍るとを読まなくなるのだと反省の思いが強くあった。来年からは是正しなければならないとかなり深刻な反省を覚えるところがあったが、それはそれとして今年出たで印象に残ったを取り上げることとする。 ■印象に残る研究あれこれ どのような脈絡をつけたものか考えたが、ランダムに取り上げることとした。まず一冊目として取り上げたいのは川名晋史『基地の消長 1968-1973 日土の米軍基地「撤退」政策』(勁草書房)である。書は基地問題をめぐる政治学を研究対象としてきた政治学者が、1960年代後半に格化し

    2020年の本 - Valdegamas侯日録
  • 2019年の本 - Valdegamas侯日録

    はてなブログ形式で初の投稿となった。毎年言い訳から始めるのも芸がないが、読書のはかどらない一年であった。この調子で新刊のとりまとめをするのもおぼつかない感じもするが、いくつかのカテゴリで実際に目を通し、印象に残ったを取り上げたい。 ■日外交史をめぐって 他の項目より日外交史という範囲設定はかなり狭い。そうした枠の中でも例年通り多数の書籍が出版されたが、特に印象に残ったのは、近現代の日外交通史である波多野澄雄編著『日外交の150年―幕末・維新から平成まで』(日外交協会/現代史料出版)であった。 自国史ということもあり、日外交史のテキストは世の中に多数存在する。しかし、幕末から現代までを一貫して、専門の外交史家がモノグラフとして執筆したものは実はあまり多くない。その点で書は細谷千博『日外交の軌跡』、池井優『日外交史概説』、井上寿一『日外交史講義』以来の取り組みといえるだろ

  • 2018年の本 - Valdegamas侯日録

    一年越しの更新となった。はてなダイアリーの終了が告知されたこともあり、恐らくこれがはてなダイアリーへの最後の投稿になると思われる。今年は昨年より状況が悪く、完読ではなくつまみ読み程度で終わったが多かった(読書メーターの更新も滞っている)。とはいえ、今年刊行のを中心に、いくつか印象に残ったを整理したい。 ■国際政治 政治学の範疇に入る自体がそれほど読めず、どちらかといえば国際政治・日政治に区分されるようなに偏った読書をする一年であった。ここでは広く国際政治にまとめられるを取り上げたい。印象に残ったのは、西平等『法と力』、田所昌幸『越境の国際政治』、小川浩之・板橋拓己・青野利彦『国際政治史』、モーリス・ヴァイス『戦後国際関係史』の四冊だった。 西平等『法と力―戦間期国際秩序思想の系譜』(名古屋大学出版会) 20世紀に国際政治学は、どのようなロジックから生まれたのか?それは国際政治

  • 2017年の本 - Valdegamas侯日録

    「今年も何か書こうと思っていたのだが…」と始めるのはもはや前口上以上の意味はない。昨年に比べて色々と忙しく、読み通せた冊数は昨年より減り、70冊程度だった。印象に残ったについて、例年通りある程度のまとまりをもって整理したい。 ■外交史 外交史研究で関心を引いたのは、佐々木雄一『帝国日の外交』、服部聡『松岡外交』、山章子『米国と日米安保条約改定』、添谷芳秀『日の外交―「戦後」を読みとく』の四冊だった。 最初の二冊は戦前日の外交史研究である。たまたま今年の年初に細谷千博『両大戦間の日外交』(岩波書店、1988年)を読み返すことがあったのだが、その際つくづく感じたのが、戦前外交史の泰斗たちの議論の強固さであった。 よく知られているところであるが、戦前日の外交史研究は、それが破滅的な敗戦に至ったという事実、更に大方の史料が敗戦により公開されたという背景が重なり、1950年代後半頃から

    2017年の本 - Valdegamas侯日録
  • 2016年の本 - Valdegamas侯日録

    あっという間にまた一年が終わる。今年は読書メーターを利用することでまともな読書記録をつけるようにしたのだが、どうも80冊弱を読んでいたことがわかった。例年こうした記録をとっていないので明確な比較の基準がないが、新書の類をほとんど読んでいないことに気づかされる。それにしてもこうしたサービスを使うと、あれも読んでいないしこれも読みかけで終わった、などというものが山のようになっていることに気づき憂になる部分もあった。これからもそうしたぼやきを重ねながら歳を取ることになりそうである。 今年読み終えたを対象として、印象に残ったを整理した。昨年同様、ある程度のまとまりをもって整理したつもりである。おおむね今年出たが対象となった。去年出たはうずたかく積まれたまま。恐ろしいことである。 ■外交史 わたし自身が強い関心を持っている外交史研究で、特に印象に残ったのは宮下雄一郎『フランス再興と国際秩

    2016年の本 - Valdegamas侯日録
  • シン・ゴジラ論のあとのシン・ゴジラ論 - Valdegamas侯日録

    前口上 シン・ゴジラは映像の快感に満ち満ちた作品であった。何度となく繰り返される政治家や官僚たちの会議、自衛隊による整然としたゴジラへの攻撃、ゴジラを襲う無人在来線爆弾と高層ビル、そして鳥肌が立つほど美しいゴジラの熱線放射。どれもこれも素晴らしかった。 作を特異なものとしたのが、作品が社会現象として捉えられ、多くのシン・ゴジラ論が語られた点にあるだろう。教義の映画のレビューではなく、特集連載を掲載した日経ビジネスオンラインを典型として、「シン・ゴジラ論壇」は活況を呈した、あるいは呈するように仕向けられた。今しばらくこうした状況は続きそうな様子である。 おそらく2016年を振り返るとき、無視できない作品となったシン・ゴジラであるが、わたしは8月頭に一回目を見たときから耐え難い違和感があった。しかしながらそれを文章化することにはためらいがあった。わたしがためらいを感じたのは、違和感という名の

    シン・ゴジラ論のあとのシン・ゴジラ論 - Valdegamas侯日録
  • 2015年の本 - Valdegamas侯日録

    結局一もエントリを書かないまま2015年の暮れを迎えたが、去年同様、読んだ、買ったなどの感想を並べて一年の締めとしたい。 昨年は順不同、一冊ごとの紹介としたが、今回はある程度自分の関心分野をもとにまとめることとした。 ■政治外交史 今年は戦後日外交史研究でとりわけ注目すべき二冊が刊行された。武田悠『「経済大国」日の対米協調―安保・経済・原子力をめぐる試行錯誤、1975〜1981年』と、白鳥潤一郎『「経済大国」日の外交―エネルギー資源外交の形成 1967〜1974年』である。いずれもGNPで世界二位の経済大国となり、また沖縄返還と日中国交正常化という「戦後処理」の最終課題を終えつつある時代の日外交を描く、格的な歴史研究である。武田は日米関係を、白鳥は日外交を中心の分析対象とするものだが、ジャーナリズムや政治学的分析の手にゆだねられていた分野がいよいよ一次史料をベースにし

    2015年の本 - Valdegamas侯日録
  • われわれは今や全員が平和主義者である?―松元雅和『平和主義とは何か』(中公新書) - Valdegamas侯日録

    多くの違和感が残るであった。書が主題とする戦争と平和をどのように考えるのか、というテーマ自体が極めて大きい。しかし、それ以上に論じ方、論じられる内容に何とも言えないもどかしさと不満を覚えたからである。ともあれ、書の議論を要約した上で、感じられた疑問点を整理したい。 平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書) 作者: 松元雅和出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/03/22メディア: 新書この商品を含むブログ (27件) を見る 書の概要 著者は平和主義を「平和的手段をもって平和という目的を達成しようとする主義(p.6)」と位置づけ、「国際関係の指針として、人々の支持を得られ、説得力のある平和主義のあり方を探ること(p.iii)」を書の目的として掲げる。そして平和主義の思考方法には二つのアプローチがあり、さらに二つの路線があることを示す。 思考法に

    われわれは今や全員が平和主義者である?―松元雅和『平和主義とは何か』(中公新書) - Valdegamas侯日録
  • 郷原・佐々木双方のある種の正しさ―孫崎享『戦後史の正体』を読む・補遺 - Valdegamas侯日録

    『朝日新聞』9月30日書評欄「売れてる」のコーナーにおいて、佐々木俊尚氏が孫崎享『戦後史の正体』を酷評した。それに孫崎氏が激怒し、さらに郷原信郎氏が孫崎氏よりのスタンスから佐々木評を批判する、というスパイラルが発生している。 そもそも「売れてる」はイキのいい評論家やライターの類に書店に平積みされるベストセラーを読ませては酷評させ、亜インテリの溜飲を下げせしめるという中々趣味の悪い欄であり、佐々木氏の『戦後史の正体』評もそういった同欄の趣旨にたがわない。「米が気に入らなかった指導者はすべて検察によって摘発され、失脚してきたのだという」「典型的な謀略史観」「日の戦後史が、米国との関係の中で培われてきたのは事実だろう。しかしそれは陰謀ではなく、米国の一挙手一投足に日の政官界が縛られ、その顔色をつねにうかがいながら政策遂行してきたからに他ならない」と叩き伏せ、「『今の日がうまくいっていな

    郷原・佐々木双方のある種の正しさ―孫崎享『戦後史の正体』を読む・補遺 - Valdegamas侯日録
  • 過剰に大きな星条旗―孫崎享『戦後史の正体』を読む - Valdegamas侯日録

    戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1) 作者: 孫崎享出版社/メーカー: 創元社発売日: 2012/07/24メディア: 単行購入: 31人 クリック: 410回この商品を含むブログ (86件) を見る 感心できないである。 著者が出版社から「高校生でも読めるような冷戦後の日米関係」を書くように希望されたことが書出版の動機であり、構想を考えるうち、冷戦後に限らず、戦後の日米関係の通史として描くとを決めたそうである。とはいえ、書は日米関係史としてははなはだ中途半端なものである。その内容からして、日米関係というファクターを重視した、戦後史(つまりタイトルどおり)とする方が妥当だろう。 書はまず細部の不用意さが目を引くが、書のようなは細部を都度つつきまわすより、その示す議論の枠組みについて批判的検討をするべきだろう。まず概略をまとめたうえで、枠組みの検討を行ないたい。 書の概要

    過剰に大きな星条旗―孫崎享『戦後史の正体』を読む - Valdegamas侯日録
    namawakari
    namawakari 2012/09/29
    勉強になる。/「正体」とか「真実」などといった言葉がタイトルについた本は眉に唾つけることにしている。
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