かつて10数冊の本を出してきたが、今回の僕の著書『やらないか!「薔薇族」編集長による極秘的ゲイ文化史論』(彩流社刊/本体価格1800円)ほど、原稿を出版社に持ち込んでから、こんなに時間がかかったことはない。 今の時代、急速に出版事情が悪化したためといえる。本を出すことも大変だけど、書店に並んだとしても、その半分近くが返品されてくるのだからたまったものではない。ネットに押されて本を買わなくなってしまったからだ。 印刷所の職人さんが、鉛(なまり)を溶かして作った活字を一本一本ひろって組んでいく。これは大変な作業だった。読みにくい字を原稿を見ながら活字を拾う。だから組代というのが一番お金がかかったものだ。それを増刷する時に使うための紙型というものがとってあり、そこに鉛を溶かして流し込み、また印刷することができた。これは実物をお見せしないと理解できないだろう。 有楽町のかつて朝日新聞社の本社が建っ