19世紀は移民の世紀、20世紀は難民の世紀といわれた。それに倣えば、21世紀は「流民の世紀」といえるのではないか。 国境を越えて、人々の大移動が始まった。人類は地球規模の気候変動や天災・疫病、侵略・迫害などから逃れるために民族単位で大移動を繰り返してきた。かつての大移動が、生き延びるための遁走だったとすれば、現代の流民たちは、民族単位ではなく、トーマス・フリードマンが近著「フラット化する世界」で描かれている平準化されたプラットフォームの上をあたかもビリヤードの玉のように激しく動き回る。 それは、移民が約束の地を、難民が安息の住処を求めて旅をしたのとは違って、せり上がってくる個々人の欲望が絡み合って、のた打ち回る龍のように大きな奔流を成している。 人口爆発とグローバリゼーションが流民を動かす そして、現代の流民たちを突き動かしている基本的な動因は、グローバリゼーションによる富の拡散・偏在と人