農林水産省が「2050年までに、化学農薬の使用量を50%低減/化学肥料の使用量を30%低減/耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ヘクタール)に拡大」などの計画案を打ち出しました。現在、パブリックコメントが行われています。EUを見習ってのグリーン政策ですが、根拠に欠ける目標値、文言が並び、関係者からは「目標達成は絶対に無理」「EUの猿まねをしてどうする?」などと、悪評ふんぷんです。 食の安全の専門家からは、「このままではカビ毒汚染などが増えるおそれがあり、食の安全が脅かされかねない」という指摘も出てきています。今年9月に開かれる国連食料サミット向けのポーズなのか、あるいは、選挙を間近に控えたポピュリズムか。2回に分けて、計画案の問題点を詳報します。 目標は、化学農薬5割減、有機農業面積25% 農水省が検討しているのは、「みどりの食料システム戦略~食料・農林水産業の生産力
呆気にとられた。2020年東京五輪・パラリンピックの日本選手団が着用するオフィシャルスポーツウエアの発表会での出来事だ。21日、都内の発表会場で東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が「私はマスクをしないで最後まで頑張ろうと思っているんですが…。どうぞお帰りになったら手を洗うとか、特に選手は気をつけて風邪など引かないようにウイルスをもらわないように」などと発言。会場内のほんの一部からはやや失笑も漏れたが、大半の関係者が凍り付いていた。 新型コロナウイルスの感染が拡大の一途を辿る中、厚生労働省は国民にマスク着用を促している。それにもかかわらず、東京オリ・パラ大会組織委員会で重責を担うトップがマスクをしないことを美徳とし、厚労省の呼びかけに逆行する意思を示してしまった。 自らマスク着用を拒否し続けることで日本には新型コロナウイルスが蔓延しておらず、東京五輪開催に何の不安もな
農業のIT化が進む中、農協の業務の中でもやっかいな出荷物の配送予定の作成時間を大幅に短縮するシステムが登場した。1日8時間かかっていた作業がわずか1秒で済むという。導入するのは、神奈川県の三浦市農業協同組合(以下三浦市農協)とサイボウズ。独自のアルゴリズムを使って、人間が計算するよりも速く、かつ効率的な配車予定を組むことが可能になる。 時間かかるうえにトラック台数多く非効率 農協にとって出荷振り分け作業というのは、最も面倒な作業の一つ。翌日に農家から出荷される出荷物の量を把握し、市場などの配送先ごとの出荷数量と、荷物をどの運送会社のトラックにどう積み分けるかを決める。この作業は基本的に手作業で行われていて、三浦市農協の場合、まずは農家が各出荷所に翌日の出荷予定を連絡し、各出荷所が農協に連絡。農協は全出荷所から受け付けた数量をExcelへ入力し、北海道から大阪までの約50の市場への出荷数量を
神奈川県大磯町の中学校の給食問題、皆さんはどのようにご覧になっていたでしょうか。2016年1月から事業者委託の弁当方式ではじめられた給食。異物混入が相次ぎ味も悪く残食が多いとして、今年9月に問題が表面化しました。 町によれば、16年1月からの異物混入は84件(毛髪39件、繊維14件、虫7件、ビニール片4件など)。毛髪が束になって入っていた、という苦情もあったとされています。しかし、工場内で入ったことが明確なのは毛髪3件、繊維2件、虫1件、ビニール片4件など計15件にとどまっています。 報道によれば、事業者は10月13日を最後に納品を中止し、町は別の事業者に弁当提供を要請していますが、3社に断られたとのことです。 断られるのは当たり前でしょう。事業者にしてみれば、弁当を提供し始めたときに、努力いかんにかかわらず、同じように苦情が多発するのが目に見えているからです。 食品に毛髪や虫等の異物が入
商店街の再生や、公民連携による「稼ぐ公共施設」づくりなどを手がける木下斉氏と、ITを駆使して自ら「小さくて強い農業」を営みつつ、さらにほかの農家への支援事業を構築中の久松達央氏。注目を集める二人の初顔合わせが実現した。 右肩上がりの時代はとうに過去のものとなり、縮小と衰退ばかりが視界を埋め尽くす現在にあって、それでもしたたかに「小さく強く稼ぐ」ために必要な思考と行動とはどのようなものか。また、再評価されるべき過去の知見とは――。 「どこでも誰とでもうまくいく方法」は存在しない 久松 木下さんは商店街や不動産オーナーからオファーを受けることが多いと思うのですが、行ってみると何を語ってもまったく響かない人ばかりでうまくいかない、なんてこともあるんですか? 木下 山ほどあります。100あるうちの98までは響かない、いや99かな(笑)。 ま、それが実感です。 久松 自分というフィルターを信じて組め
マクドナルドの失敗が告げる 「戦後モデル」の終わり(前篇) なぜ「小さくて強い農家」が若者を惹きつけるのか 小川孔輔×久松達央 「小商い」を、強くて持続的なビジネスにするために必要なものとは何か――。 フードサービス界の巨人、日本マクドナルドが負のスパイラルに落ち込んでいくのと時を同じくするように刊行された著書『マクドナルド 失敗の本質 賞味期限切れのビジネスモデル』(東洋経済新報社)が話題の経営学者と、「小さくて強い農家」であるためのノウハウを著書『小さくて強い農業をつくる』(晶文社)で惜しみなく公開した農園主の対話は、日本の高度成長を支えた理論の限界を指し示すものになった。 小売が輝きを失った時代 久松:小川先生がいきなりうちの農園に来てくださったのは、『キレイゴトぬきの農業論』(新潮新書)を出した後でしたよね。 小川:農業関係で面白い本があると僕に教えてくれる方がいて、その人に薦めら
真の「環境負荷」とは? 丸山:ただ、有機農業と慣行農業を栽培法として連続的にとらえられるかというと、ある種の断絶はあると思います 久松:どういう意味での断絶ですか? 丸山:論理としての断絶もあるでしょうし、土壌の生態系で見ても、環境保全的機能としても断絶はあるでしょうね。どれくらい近代技術に依存していて、人間が現場で考えて手立てを打つことができるか、とか、技術の成り立ちから別のものという部分が少なからずあると思います。 久松:農業者の人為の及ぶところで改善できるかどうか、ということですよね。その意味で、先生がおっしゃるように「現場」を持っているかどうかはやっぱり重要ですよね。実際に「野菜がちゃんと育っている」状況がある限りは、断絶があっても矛盾が共存していても構わない、というのが僕の考えで、本に書いていることでも矛盾だらけでいくらでも突っ込みどころはあると思います。あんまり突っ込まれないん
「エコな農家」か「農家のエゴ」か 有機は環境にいい? 悪い? 農業と環境の微妙な関係を考えよう(1)久松達央×丸山康司(全5回) エコに目覚めて一流企業を飛び出した「センスもガッツもない農家」が、悪戦苦闘の末に培ったノウハウや思考法だけでなく、ダメな農家時代の苦い記憶までさらけ出した一冊、『小さくて強い農業をつくる』が好評の久松農園代表、久松達央さん。 〈エコ〉と〈エゴ〉のあいだで揺れ続け、ときに引き裂かれときに暴走する社会を正面から見つめ、個人の損得や勝手な逸脱までも環境持続性に組み込むことを構想する、環境社会学者の丸山康司さん。 旧知の二人だから話せる、ほかでは言いにくい「農業とエコ」の関係を、思いのままに語ってもらった。 「この人の話は割り引いて聞くように」 丸山:知人の開いたバーベキューで初めて久松さんと会って、意気投合したんですよね。その頃、有機農業が打ち出す健康的なイメージとか
農協改革をめぐる政府と農協組織の攻防戦の本丸は准組合員問題であった。准組合員問題と農協が経営する農業とは無縁の事業の実態とは─。 *この記事は、Wedge4月号の特集「滅びゆく農協」の第3章を掲載したものです。 一連の農協改革において、JA全中にとっての本丸は、准組合員問題だった。准組合員の事業利用量に規制がかけられたら、JA全中の負け。農政族議員を応援につけての政府とのガチンコ勝負は、水入りに終わってしまった。農林水産業・地域の活力創造本部が出した「農協改革の法制度の骨格」には、こう表現されている。 「准組合員の利用量規制のあり方については、直ちには決めず、5年間正組合員及び准組合員の利用実態並びに農協改革の実行状況の調査を行い、慎重に決定する」 農協は農業の協同組合なので、正組合員だけで組織を構成するのが筋。農家の数が減り、農村が変貌していくと、正組合員だけでは組織を維持することができ
TPP交渉の合意が近づいている。最後の焦点の一つが米であるが、政府は高関税を維持するために、輸入特別枠を検討している。聖域化している高関税の背景には農協が存在する。 *この記事は、Wedge4月号の特集「滅びゆく農協」の第4章を掲載したものです。 TPP交渉の合意が近づいている。自由貿易推進の共和党が多数を占めている連邦議会は、通商交渉権限を政府に譲る貿易促進権限法を、春にも可決しそうである。アメリカ政府としては、いつでも交渉を妥結し、合意文書に署名できる用意が整う。 日本とアメリカの農産物をめぐる協議も、合意に近づいている。日本は、牛肉や豚肉の関税を大幅に削減することに合意した。関税撤廃を強く迫っていたアメリカの豚肉団体が、これを評価したことで、ワシントンでは、日米の交渉はまとまるという見通しになっている。 米について、日本は、関税を維持する代わりに、ミニマム・アクセスといわれる毎年77
人口減少の進行と地方経済の衰退を受けて、第二次安倍改造内閣が重要課題として掲げている「地方創生」。「官僚や有識者を地方に派遣し、地域の声を聞く」「補助金バラマキにはしない」などと政権内部からは勇ましい声が聞こえてくるが、具体像はまだ見えていない。 一方で、「創生」される側である地方に目を移すと、B級グルメやゆるキャラのブームが全国津々浦々まで浸透した感もあるものの、それによって本当に地域の活性化は果たされたのか、疑問も多い。 まちをひとつの「会社」に見立てて経営を立て直す事業に携わる木下斉氏と、経済学の立場から都市と地方のあり方を模索する飯田泰之氏の対話は、戦後日本と地方の関係を象徴する「新幹線」を問い直すことから始まった。 新幹線で地方は復活するのか? 木下:北陸新幹線が来年の春に開通します。地方には相変わらず新幹線待望論が根強いのですが、それが果たして地域活性化につながるのかというと、
経営所得安定対策(旧・農業者戸別所得補償制度)に批判的な人は多い。普通の真面目な人にとって、政府がお金を配るというのはなんとなく不健全に感じるのだろう。しかし、十分な仕事がない、仕事があっても給料が低すぎる、働きたくても病気などで働けない人も多い。政府は、お金を配らざるを得ないものだ。というよりも、むしろ現実にそうなっている。 表は、農業の売上のうち、政府の補助金について農家の水田面積ごとに示したものである。表を見ると、面積が大きくなるほど所得補償額が大きくなっている。例えば、1ヘクタール未満では11.2万円の受取に過ぎないが、20ヘクタール以上では1438.4万円にもなっている。しかも、売上に占める所得補償の比率も、1ヘクタール未満では11.1%であるが、20ヘクタール以上では36.4%になっている。大きな農家ほどより高い比率で所得補償を得ているのである。 (出所)農林水産省「農業経営統
先進国で漁業は成長産業 日本の漁業は衰退の一途を辿っている。日本の漁業従事者は、ピーク時の100万人が、現在は20万人を割りこみ、さらに減少を続けている。平均年齢は60歳を超えた。漁村の限界集落化が進んでいる。日本の漁業は、縮小再生産どころか、消滅しかねない状況である。 漁業従事者の高齢化は、ここ数年間に始まったことではない。何十年も新規加入が途絶えた状況を放置してきた結果である。日本の漁業はすでに産業として成り立っておらず、一般の企業だったら、とっくに倒産している状態を補助金で維持している。漁業者の平均所得は、200万円程度。年金の足しにはなるが、これから家庭を持つ若者が、夢を持って参入できる環境ではない。「仕事がきつい。収入は悪い。そんな漁業には、いくら息子といえども、入ってこないのは当然です」と、年配漁業者は肩を落とす。 漁業の存続には、漁業収入の改善が急務である。中長期的に安定した
飼い主は自分のペットと顔が似てくるといわれるが、今回の主人公はナマズのような顔をしたベトナム人の話題である。 ステンレスなどに使用されるクロム鉱石の開発でベトナムに行った時、ナマズのような顔をしたトイ会長(60歳)に会った。クロム鉱山の親会社がベトナムで最も大きな水産養殖企業で、そこの会長さんである。700万人都市のホーチミン市から3時間ほど南西、メコンデルタの河口にあるタンホアという町で操業している近代的な水産養殖業を参観した。 ナマズ会長は、軍出身の企業家である。わずか12年足らずで彼の水産会社をベトナムナンバー1に育て上げ、2007年には会社をホーチミン証券市場に上場させた成長企業の総帥である。 その秘密が意外なことにメコン河のナマズ養殖であった。それは日本人が思い描く日本ナマズではなく、現地でバサと呼ばれている白身の魚で、英名ではパンガシウス(pangasius)と呼ばれている。た
「日本の農産物は品質が良いから海外で売れる」と思う読者は多いはずだが、現実は違う。 政府は農産物輸出を農政の重要テーマに掲げるが、農水省のやり方は現地で失笑を買っている。 一方、日本よりも小さな面積のオランダが農産物輸出で世界第2位になれたのはなぜか。 11月初旬、オランダの経済・農業・イノベーション省の招待で同国を訪ねた。筆者はここで、世界から取り残されている日本農業の現実を痛感することになった。 高級品でも売れない理由 我が国の農業界は、数十年間、世界で最も豊かで大きなマーケットの中にあった。それに安住した結果、日本の農業はおよそ先進国とは思えない“精神の鎖国”のままである。世界と比較しても技術水準が高く、海外マーケットでも十分にビジネスチャンスがあると思える花や野菜、果実なども、輸入品に「怯える」だけで、海外マーケット開拓への熱意が感じられない。 ◎農産物輸出ランキング 日本は・・・
食品中の放射性物質の新基準値案が検討されています。これまでの暫定規制値に比べて数値が大きく下げられ、4月から施行される見込みです。ところが、新案に異論が出てきました。新基準値設定には、文科省設置の放射線審議会の了承も必要なのですが、放射線審議会が大筋では了承しながらも、「子どもに対する過度の安全尤度を設定している」などの意見を添えようとしているのです。つまり、「厳しすぎる」というわけです。これを受け、読売新聞も2月4日付社説で「食品の放射能 厚労省は規制値案を再考せよ」と主張しました。 「何を言っているんだ。基準は、厳しくすればするほど安全性が高まるのだから、いいじゃないか。反対する原子力ムラの学者たちや御用ジャーナリストはけしからん」。そう受け止めたあなた、それはおそらく、世論の大多数の意見です。でも、その裏側には「落とし穴」がいっぱいです。 私は、運営しているサイト「Foocom.ne
食品の放射能汚染とフードファディズム 「『普通』の食事、してますか?」 高橋久仁子・群馬大学教授が問う ――東日本大震災、そして福島第一原発の事故が起きてから10カ月が経ちました。4月からは食品の放射性物質に関する規制値が見直されます。食品の専門家である高橋先生のもとにも様々な質問が寄せられたのではないでしょうか。 いくつかの消費者団体などから、「何の食材、どこの産地を避けるべきか」「放射性物質を排出する食べ方はあるか」といった内容の質問がありましたが、私は一貫して「ジタバタせずに、『普通』の食生活を送るべき」と回答しました。食品を避けることは個人の自由だとしても、「放射能を排出する食べ方」は、栄養学的に意味がないからです。 しかし、週刊誌やインターネット上では、幾度となく「放射能を排出する食べ方」が指南されてきました。このような、「ある食材や調理法によって放射性物質が排出される」という考
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