「トレンド(先端)」という言葉が流行語となった八十年代後半は、一方で、価値観の多様化とか相対化などという言葉も、メディアで飛び交った時代である。 あれもあり、これもあり、それもあり。つまり何でもありだが、コレ!と言える「軸」や価値基準は曖昧。そんなもの別になくていいんじゃないの?無理して決めなくても「トレンド」をネタとして楽しんでれば。そんなお気楽で斜に構えた雰囲気が横溢した時代でもあった。 そういう茫漠とした状況に耐えられなくなった時、人はどこに向かおうとするのか。「なにか確固たるもの」、つまりベタなものである。 「確固たるもの」はそのへんには転がっていないので、過去に遡ることになる。「日本人」「伝統」「家族」。コンサバな人はそっち方面に落ち着いた。「からだ」「食」「自然」。エコ体質な人は、そちらに傾倒した。 しかしそんなものにアイデンティティを見いだせない人は、どうしたらいいのか。「メ