未婚の女というだけでホテルマンは意地悪をする。警察官からも軽んじられ、表面上は男女平等の立場を見せる同僚も内心はわからない。物語は、まだまだ女性蔑視の習慣が色濃い宗教都市で起きた連続殺人を調査する女ジャーナリストの奮闘を描く。被害者は娼婦ばかり、宗教家に忖度する警察は本気で捜査を進めない。堕落した女たちが神の鉄槌を受けたと半ば思っている。容疑者は自らの行為を聖戦と称し、保守的な男たちはむしろ彼を支持している。映画は、西欧的な価値観からすれば21世紀とは思えないほど極端な女性差別と、聖典の教えこそ絶対に守るべき価値観と考える人々の声に同じくらい時間を割く。どちらを支持するかは見る者に委ねるという押しつけがましさのないところが、非常に好感を持てた。 イランの聖地・マシュハドで10人以上の娼婦が連続して他殺体で見つかる。犯人は社会に不満を抱く戦争帰還兵・サイード、裏通りで娼婦に声をかけては自宅に