緑深い渓谷にほど近い都内の住宅地に建てられた一軒の家。パリ帰りの新鋭、建築家・坂倉準三[1901-1969]が帰国して最初に手がけた作品でした。「住宅は建築の本質的なものを全部もっているー」と本人が語る通り、彼の建築の魅力である、敷地を活かす建物の配置、プロポーションや細部の造形における卓越した感覚、技術への深い理解は、その後も続く住宅への取り組みにおいて凝縮したかたちで見られます。さらにそれらの現代住宅にふさわしい新しい家具を考案し続け、その日本の伝統美と機能との巧みな結合には、ル・コルビュジエのもとで共にモダニズムの理論の実現に励んだシャルロット・ペリアンの影響がうかがわれます。 昭和の激動を刻んださまざまな出来事や社会的課題に、坂倉準三は建築作品のみならず、他の領域のクリエイター達と関わりながら広義のデザイン活動によって回答を提示していきました。本展は、大扉の原寸大再現の試みに始ま