能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市で全壊した家屋を見つめる刀祢千春さん。自身も被災し、母親を「輪島朝市」で亡くした=1月29日午前、石川県珠洲市(渡辺恭晃撮影) 実家の下敷きとなった母は息絶え、大火で全てが焼けた。石川県輪島市の朝市近くに住んでいた母の上平静津子(かみひら・せつこ)さん(75)を能登半島地震で亡くした刀祢(とね)千春さん(50)は同県珠洲(すず)市の避難所で発生から1カ月となる1日を迎えた。肉親との別れに加え、珠洲市内の自宅も倒壊した。「まだ(母が)亡くなった実感がない。どう生きていけばいいのか」。まだ心の整理はつかない。 「きれい好きで、近所でも美人と評判だった」という静津子さん。50年以上、輪島塗の箸作りに携わっていた。専用機材で木を削り、箸の形を整える仕事姿が印象的だった。「父が釣った魚を煮つけやフライにする」など料理も得意だった。 正月2日には、家族そろっ