昨年12月17日、大阪・北新地の心療内科クリニックで発生したビル放火殺人事件から1年がたった。犠牲になったのは、精神的な悩みや不調を抱えながら、就職や復職に向けて再起を図ろうとしていた人たち。その努力を支えてきた遺族の喪失感は深く、心の傷は今も癒えない。 12月6日、夫を亡くした女性2人が弁護士らを通じてコメントを発表した。「夫がいない初めての子どもの運動会を迎えた時。頑張っている子どもたちの姿を見て、私だけが他の家族たちと違う涙を流し、空を見上げて『一緒に見てくれているかな』と心の中で(夫に)話しかけていました」 この1年の歩みを振り返る文面に刻まれていたのは、被害者支援制度の課題やメディアへの不信感、そして最愛の人を「返してほしい」という切なる願いだ。遺族が今求めていることは何か。支援者への取材も踏まえて考えた。(共同通信=白神直弥、稲垣ひより、山本大樹) ▽薄れゆく子どもの中の記憶、