[第5回]派遣禁止は有効ではない 貧困問題解決のための処方箋 大竹文雄 Fumio Ohtake 大阪大学社会経済研究所教授 大竹文雄教授 2008年末から派遣労働者を中心に大規模な雇用調整が行われている。ここにきて、雇用調整の動きは、正規雇用者にも広がりつつある。大幅な雇用調整が必要になっているのは、二つ理由がある。 第1に、今回の景気悪化が急激かつ大規模であることだ。サブプライム問題に端を発した世界的な景気後退はあまりに激しかった。そのため、日本企業も対応を迫られた。第2に、日本の過去の不況期に比べて非正規比率が高まっていることだ。 非正規雇用は、1996年では雇用者の約20%であったが、2008年には30%を超えている。 雇用調整が容易な非正社員の比率が過去最高の水準になっていたため、景気悪化に対して素早い雇用調整が行われているのである。 今回の雇用調整は、ある意味では予定されていた