東日本震災で孤立した石巻市の雄勝半島。医師がいない状態が続いたこの地域に、国際医療支援に取り組むNGO「ジャパンハート」(東京都台東区)の医師石田健太郎さん(28)が入り、避難所で診察に当たった。「大丈夫の一言が何よりの薬」。こう振り返る石田さんは、前向きに生きようとする被災者の姿に感銘を受けたという。 雄勝半島は津波により通じる道路が崩れ、インフラも途絶した「陸の孤島」となった。ヘリコプターなどで医療物資は届いたが、人が出入りできるのは干潮時のみ。長時間診療する医師はおらず、医師が来る前に避難所で亡くなった高齢者もいたという。 石田さんが駐在した大須小学校の避難者は約600人。みな不安な表情で、診察が始まるなり100人以上が殺到した。石田さんは安心させようと、診断を告げる前にまず「大丈夫だよ」と声を掛けた。症状はさまざまだったが、その一言で、みんな生き返ったように表情が和らいだという