2021年10月末日。奈良市の中心市街地・奈良町のきたまちにある「豊住書店」が、江戸時代から続く歴史に幕を下ろした。 同年8月に店主の豊住勝郎さんが、その1カ月前に他界した妻のハツ子さんの後を追うようにこの世を去った。店を切り盛りしていた2人がいなくなった。 東京でハイヤー運転手をしていた息子の勝輝さん(58)は、父の生前に店を継ごうかと考えていた。だが、売り上げの柱である教科書の取り次ぎをやめることが決まっており、父からも22年春に閉店するつもりだと聞いていた。悩んだ末に、店を畳む決断をした。 SNSで閉店の告知をすると、長年の常連客らが次々と別れを惜しみに訪れた。勝郎さんやその先代店主の謹一さんに本を紹介してもらった人、東京からの出張の際は必ず立ち寄るという人。「最後の1週間は、棚の間を人が通れないくらい、お客さんでいっぱいになりました」 「1年もあれば」と思いきや シャッターを閉じた