前回のコラムではテレワークと成果主義の相性が良いという結果を紹介した。その上で安易に成果主義を適用すると、マルチタスク問題、つまり成果が見えにくい(が重要な)業務への努力が減少し、意図せざる結果を生むことになることを述べた。今回のコラムでは成果主義を導入しなくとも、テレワークをうまく機能させるための方法を考える。鍵は信頼の形成と内発的動機だ。 解決策1――信頼の形成 我々の論文(Kawaguchi and Motegi, 2020)では、業種・職種や企業規模を制御した上でなお、正規労働者の方が非正規労働者よりもテレワークをし易い、という結果が出ている。これをどう解釈すればいいだろうか? 一つの解釈として、正規労働者を長期雇用者とみなせば、労働者と雇用主の間に関係的契約が結ばれているものと理解できる。関係的契約とは、契約書などで明文化された契約ではないが、長期的関係によって維持される口約束の