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ブックマーク / flipoutcircuits.blogspot.com (10)

  • スタンフォード哲学事典の「言語行為」を訳読しよう #02

    言語行為について学ぶ最初の一歩にはふさわしくないなぁ…と思いつつ,それでも続けるよ.(前回はこちら) ---- ここから訳文 ---- 2. 内容,効力,いかにして言うことによって言ったとおりにできるか ものを言う行為とは,とにかく意味のある言葉を発話する行為だ.これに対し,「言語行為」は専門用語だ.近似の第一歩として言えば,言語行為とは,(他にもやりようはあるにせよ)自分がしかじかのことをやる言うことによってまさにその行為を遂行できる行為のことだ.このように考えると,辞任,約束,確言,質問は,すべて言語行為に当たる.他方で,相手になにかを信じさせたり,気分を害したり,身長を6インチ伸ばすのは言語行為ではない.たとえば,べつにこれしかやりようがないわけではないが,「私は(…)辞任いたします」("I resign...") と言うことによって辞任できる.だが,この直観的な概念だと,あまりにも

  • スタンフォード哲学事典の「言語行為」を訳読しよう #01

    『スタンフォード哲学事典』から,「言語行為」の項目をちょっとずつ訳していこう.やたら長いし,ちょいちょいめんどくさい言い回しをしてるので,訳し終わるまでけっこう時間がかかると思うけど,興味がある人はおつきあいくださいな. 原文: Mitchell Green, "Speech Acts," Stanford Encyclopedia of Philosophy, 2007/2014. 原文の方でも blockquote がちょいちょい使われているので,訳文全体は blockquote に入れないことにする. ---- ここから訳文 ---- 普段の会話で私たちが自然と注意を向ける主な対象は,お互いに交わしている文ではなく,そうした文の発話で遂行されるいろんな言語行為だ:お願い,警告,招き,約束,謝罪,予測といった言語行為に自然と注意が向かう.こうした行為なしに人とのやりとりは成り立たない.

  • 「パフォーマティブ」っていいたい紳士淑女のみなさまへのご提案

    ジェンダー論まわりでなんか「パフォーマティブ」って言いたいみなさまに,言語行為論をいくらか知っている人間からご提案させていただきたい. まず,最初にとても基的なことを確認しましょう:あなたが言いたいことは,当に,初期の言語行為論で言う「パフォーマティブ」すなわち行為遂行的な発語のことなのでしょうか? そもそも,あなたは言語行為論を必要としているのでしょうか? (関連事項として:「コンスタティブ vs. パフォーマティブ」という区別はあまり便利な区別ではありません――が,これはさしあたり脇に置いてしまいましょう.) あなたが言いたいことが次の事項 (1)-(3) に当てはまらないか確かめてみましょう―― (1) 必ずしも言葉の使用に関わらない事柄である; (2) 個別の行動・行為というよりは習慣的な営み,「プラクティス」である; (3) 演技的または誇示的な言動を念頭に置いている. 項目

  • flip out circuits: 「無敵」の人になるための3点セット

    3つそろえて,無敵の邪悪なひとになろう! テロリスト的蒙昧主義:わざと曖昧模糊とした書き方をして,なにを言ってるのかわかりにくくしよう! キミの批判者が「あいつはこういうことを言っている」と言ったらこう言い返してやろう――「あなたは私を理解していないよ.あたまがわるいね!」 「泥壕」戦術:キミの批判者に対しては,「この議論にはこれだけの膨大な文献の歴史と蓄積がある.しっかり読んで出直してきたまえ」と言ってあしらおう! 相手がほんとに読み始めたら,みずから泥壕にハマってくれたようなものだ.やったね! グル効果:とても上手くいったときには,キミの曖昧模糊とした言動に深遠な意味を読み取ろうとしてくれる集団がつくれるかもしれないぞ! ただし,深読みに誘導できるだけのの地位や権威や「カリスマ」が必要だけどね! もちろん,よいこはこんな手を使ってはいけませぬ. 一方で,この3つと似て非なるものとの区別

    nizimeta
    nizimeta 2017/08/05
    “そこで,ただの泥壕とそうでない研究文献の蓄積を見分ける経験則が「論文2本ルール」だ.相手がいう「膨大な研究文献」から模範・代表といえる論文を2本提示してもらう”
  • 没原稿サルベージ:時制とアスペクトの Further Readings

    澤田治美・高見健一=編『ことばの意味と使用』の拙稿で没になった箇所を発掘したので貼ってみたり: アスペクトの初歩的解説には,平易な英語で書かれた Kreidler (1998: ch10), Saeed (2009: ch5) を薦めたい.前者の練習問題は省略せずにこなしてほしい.理論的にやや発展的な内容も含む解説には Michaelis (2006) と Binnick (2006), さらに Jaszczolt (2002) がある.文章は晦渋だが Lyons (1977: ch15; 1995: §10.2-10.4) と Frawley (1992: ch10) もあわせて参照されたい.英語における時制・アスペクトについて語学的な理解を深めるには Leech (2004) が好適.また,Dixon (2005: ch7) は用語法がやや独特だがここからも多くの知見が得られる.Dec

  • 例文メモ:could have VP で反事実の意味が打ち消されているケース

    出典はおなじみのクルーグマン: Well, I could have told you all of that at the time — and, in fact, I did, over and over again. 当時,ぼくにはそういうことをちゃんと伝えることもできた――で,実際に,何度も繰り返してそう伝えた.

    nizimeta
    nizimeta 2014/11/16
    “Well, I could have told you all of that at the time — and, in fact, I did, over and over again.当時,ぼくにはそういうことをちゃんと伝えることもできた――で,実際に,何度も繰り返してそう伝えた”
  • 「WWDC 2013:アップル形容詞交響曲」

    The Verge から,アップルが新製品を発表した WWDC 2013 で頻出した形容詞・副詞だけを抜き出した動画 "Apple's WWDC 2013 keynote: a symphony of adjectives". 空疎な形容詞(や副詞,フレーズ)の勉強にどうぞ: 以下,かんたんに解説: 1. incredible「信じられないほどの」 / incredibly「信じられないほどに」 字面だけで言えば credible「信じられる,信憑性がある」に否定の接頭辞が結びついた形容詞 incredible「信じられない」と,この形容詞から派生した副詞ではあるものの,いまではたんにものすごいですよと強調する言葉になっている(コウビルドでは,同義語に fantastic を挙げている). 2. super-「超-」 "super-fast," "super-glassy," "super

    「WWDC 2013:アップル形容詞交響曲」
  • clip: アッシュの「順応」実験(動画)

    被験者たちは4の縦棒が描かれたパネルを見せられ,左端の棒と同じ高さのはどれか答えさせられる.実は1名をのぞく被験者はサクラで,全員そろって実験の途中から明らかに正解でないものを答えにあげはじめる.このとき,物の被験者は,自分の目で見てはっきりと答えを知っていながらも,他の被験者たちの答えに合わせてしまう. (via Tim Harford "The Asch Conformity Experiment") 追記:アッシュ実験については教科書での紹介も誤解を招くかたちになっているとのこと.こちらを参照.

  • クルーグマンのブログから:日本のおはなし

    クルーグマンがブログで(また)日について取り上げている.やや長文だし,論点のなかには注意深く読む必要がありそうなものがある.(※言わずもがなのコメントを挟んでいますが,なんというか,お察しください.クルーグマンの文章はあくまで「引用」でございます.はい.) Paul Krugman, "Japan Story," The Conscience of a Liberal, February 5, 2013 まず,冒頭部分では話のきっかけに言及している.財政刺激が悪影響をもたらすのではないかという説が紹介される: Dean Baker is annoyed at Robert Samuelson , not for the first time, and with reason. The idea of invoking Japan, of all places, to justify fe

    クルーグマンのブログから:日本のおはなし
  • クルーグマンのブログから:ブッシュ時代と比較して見る「財政緊縮の意味」

    クルーグマンのブログで,ブッシュ時代と今回の「大不況」で政府支出を比較している: Paul Krugman, "Our Incredible Shrinking Government," The Conscience of a Liberal, February 1, 2013. 政府による財・サービスの購入が減少したことが,景気回復を遅らせるのに一役買っていると述べて,次のグラフを示している: ブッシュ時代の景気後退(青線)と今回の「大不況」(赤線)の比較.景気後退がはじまる前の水準を100として,四半期ごとの数字をプロットしている.景気後退がはじまって第10四半期に,赤線が下がり始めるのが緊縮への転換だ.クルーグマンは「前例のない財政緊縮」("unprecedented fiscal austerity") と形容している. では,この緊縮でなにがもたらされたとクルーグマンは考えている

    クルーグマンのブログから:ブッシュ時代と比較して見る「財政緊縮の意味」
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