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ブックマーク / tanakahidetomi.hatenablog.com (100)

  • 馬場啓之助『資本主義の逆説』メモ

    ちょっと前に福田徳三研究会で、馬場啓之助『資主義の逆説』(1974、東洋経済新報社)の話題が出たのでその読書メモなど。 馬場啓之助は一橋大学名誉教授だった人。彼の書いた『マーシャル』や『近代経済学史』は便利。特に後者は、オーストリア資論、スラッファからの独占的競争理論の歴史の俯瞰に優れて類書が日ではいまだにない名著。『資主義の逆説』は中央労働委員会の公益委員の経験を踏まえ、資主義の変貌について書いたもの。特に前半の議論は今日でも示唆に富む優れた内容。以下は網羅的ではなく、自分のためだけのメモ。 1 「資主義の変貌を「資主義から労働主義への移行」に注目」(1頁)。「労働主義への平和的移行は経済思想史にとってはまことに重大な問題を提起しているわけです」(7頁)。 2 マルクス&ジョーン・ロビンソンの資主義崩壊論。ウェッブ夫のコモン・ライフの社会観&ナショナルミニマムの政策観。

    馬場啓之助『資本主義の逆説』メモ
  • ジャン・バティスト・セーを語る:後編(AJER動画)

    後編は、ジャン・バティスト・セー自身の経済学と「セー法則」の現代的解釈について語りました。どうかご覧ください。 youtube動画 http://www.youtube.com/watch?v=QbtVsVArmAI http://www.youtube.com/watch?v=7KSz0ibC7PA ニコニコ動画 http://www.nicovideo.jp/watch/sm19561371 http://www.nicovideo.jp/watch/sm19561394 利用した文献情報(amazonでリンクできるもの) セーの著作集が現在出版中である。処女作の「オルビー」は以下のものに収録されている。 Oeuvres complètes tome V : Oeuvres morales et politiques 代表作の『経済学概論』は戦前に日語訳がでている(増井幸雄訳「経済学

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  • 核武装したらどうなるんだろうか?の経済学

    『電気と工事』1月号から転載 最近は当に物騒になってきても、なんでもテレビで核武装のアンケートの話もあったとか? 正直、やれやれ、というのが感想だ。ネットをみても核武装しないといけない、日アメリカ依存から脱却して、東アジアで安全に生き抜くためには核武装を考えるべきだ、などなどという発言が目につく。一部では政治家たちも公言しているくらいだ。ここでは、ちょっと日が核武装した場合について経済学の視点から考えてみよう。まあ、断定的な結論を出すというよりも、いままでどんなことがいわれてきたのか、考え方の整理をしてみたい。 冷戦体制の間は、日は米国の「核の傘」をさほど問題視することもなくフリーライド(ただ乗り)をしていたというのが通説だ。ただ米国の同盟国の中では、東アジア地域の日韓国は、NATO諸国に比べると、ただ乗りの度合はかなり低い。つまり日韓国も米国にただ乗りはしていたんだけど

    核武装したらどうなるんだろうか?の経済学
  • 経済学を楽しく学ぶには? 正月休み用読書&動画リスト

    お正月休み用のブックガイドと動画をご紹介 経済学を専門にやっている学生でもなければ、順を追ってミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学をそれぞれ学ぶよりも僕は経済思想史を勧めたいです。なぜならたとえ経済学が身につかなくても(笑)、歴史、思想、政治、法律、文学、芸術、人間の伝記的知識、語学に数学など、教養を幅広く得ることができるからです。もちろん歴史的に物事をみれると、批判的精神もつきますよ。 以下では経済思想史だけではないんですが、最近出たもので、いま学生などにすすめているを中心に以下にご紹介。 1 猪木武徳『経済学に何ができるか - 文明社会の制度的枠組み』 まず経済学を幅広い思想と歴史的文脈の中で再検討したこの新書は読みやすく問題意識を身に着けるのでいいと思います。僕もいままさに読んでますが、猪木先生の著作はすべて読んでほしいものばかりですね。 経済学に何ができるか - 文明社会の制度

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  • ケインズ学会でのコメント

    日のケインズ学会(http://keynes-society.blog.so-net.ne.jp/)でのコメントを以下に。この他に結構、時間を割いて話したのが、上田美和氏の『石橋湛山論』に関連して、「小日主義」と「大日主義」という従来の二分法的解釈への上田氏の反論を、僕なりに(たぶん上田氏とは異なる趣旨で)前向きに評価していることを話した。 なぜなら、『正論』に寄稿した「石橋湛山の警告」でもふれたが、極東軍事裁判のときに、普通だと「小日主義」と考えられる湛山が、自分からすすんで、「大日主義」であるはずの東条らの弁護をかってでたことが、はなはだ面倒な解釈問題になるからだ(従来の研究史ではほぼ無視されてた)。 従来の湛山の立場に関するこの二分法(小日主義と大日主義)自体を見直すか、あるいは湛山の「小日主義」そのものの定義を再考するかのいずれかが、僕には興味がある問題になる。あと

    ケインズ学会でのコメント
  • スティーブン・D・ウィリアムソン『マクロ経済学』Ⅱ応用編

    編集から頂戴しました。「新マネタリズム」を標榜する著者の現代マクロ経済学の最先端の教科書です。レベル的には付録の数式を考えると、いまの日では学部上級のものでしょう。実は僕は務校のやる気のある面々が集合した国際金融論の講義にこれを利用しています。書では「国際経済」に該当する部分を利用して、あとは時論で国際金融面の最新の動きを補う、そうするといいバランスの半期の講義ができそうです。ただかなり学部生の予習が必要ですが 笑)。 Ⅰ巻は基礎編で、しかも東日大震災に援用できる話題、また財政政策を「恒久」的なものにするときの「省庁」設置を利用したものなど、実践的なアイディアが豊富でした。 この応用編は、まず個人的に楽しめたのは、景気変動の市場均衡モデルと新ケインジアンモデルの長所と短所を比べた章、それと国際マクロ経済学を扱った部分ですね。 また最適金融政策としてのフリードマンルールの扱いも非常に

    スティーブン・D・ウィリアムソン『マクロ経済学』Ⅱ応用編
  • リフレ政策って何?

    世界各地の世界金融危機発の世界同時不況は、明々白々たる総需要不足の不況。それに対応するのは、財政政策と金融政策が中心。資市場や労働市場の効率化を図る政策はこの総需要不足の解消には役立ちません*1。 で、日もそうですがアメリカや英国などでもデフレの危機もしくはその深化が予想されています。これを回避して低インフレ状態(最終的には1〜3%のレンジ内、ただしデフレからの脱却過程ではそのレンジ以上になってもかまわない)かつ低失業率にもっていくのが「リフレ政策」。リフレ派は日だとなぜかネットのジャーゴンになっているわけだけど 笑 ただ単にあたりまえの不況脱出政策の総称。目的(低インフレかつ低失業)のため採用される財政政策・金融政策のメニューは豊富。以下は拙著『経済論戦の読み方』で一覧あげたもの(書は残念ながらいま品切れ。また04年末当時のものなのでいまこれのリニューアル版を考えています)。 ○

    リフレ政策って何?
  • 阿佐ヶ谷ロフトのトークイベントのために読んでおいた勉強用資料

    いつもそうなんですが、トークイベントの前には「勉強」をしておきます。特に今回は、はじめて組む方も多くその方々の著作も代表的なものは読んでおくのは無論なのですが、テーマも告知の文章にあった「憲法、国防、外交領土、歴史観、民主主義、そして原発」という広汎で、なおかつ僕自身の専門とかなりかけ離れた分野が多く、自分なりにかなり時間をかけて準備しました。ただいつものことなので毎回そんなことブログでも書かないのですが、今回はネットで読める文献も多いのでちょっとその紹介をかねて以下にメモします。 憲法関係……経済学と憲法の関係を意識して次の文献を読んでおきました。常木淳氏の論説はかなり面白く視野がひらけた思いがしました。また常木論文をもとにした討論の記録も、特に最後にある生存権の問題をどう経済学者と法学者が接点を見出しているのかが興味深い。そして浜田宏一先生の憲法をめぐる経済的帰結のゲーム論を利用した分

    阿佐ヶ谷ロフトのトークイベントのために読んでおいた勉強用資料
  • 松尾匡「リスクと決定から社会主義を語る」

    社会主義理論学会編集の『資主義の限界と社会主義』に収録された松尾匡さんの新しい論文です。しかしこの論文集まさかもらえると思ってなかったので買ってしまってたw しかもよくあることだけど買った翌日に大学にいくと来てるとかの必勝パターンww さてこのリスクを最も多く負担しているものに組織の決定を配分するのが最も効率的ではないか、という命題(以下略してリスク・決定テーゼ)を歴史的な事例や現実に応用していく対話調の読みやすい論説です。 旧ソ連でのコルホーズの運営などをみても一部の上級官僚、政治家たちの「国家資家階級」のコントロール。でも「国営農場」ではなく「農民の協同組合」を装ったのは、不作のリスクを政府がかぶりたくなかったから。不作でも工場労働者には一定の支払をしなくてはいけないが、コルホーズの方は不作のリスクは農民がかぶり、他方で「国家資階級」は豊作・不作に関わらず一定の分け前をピンハネ(

    松尾匡「リスクと決定から社会主義を語る」
  • 林敏彦『大災害の経済学』

    阪神淡路大震災について一貫してテーマにしてきた経済学者の実証ベースの。僕も林氏の書いたものは、自分の発言のベースとして利用させてもらってきただけにこの新書の発表は嬉しい。ただ多くの部分は、阪神淡路大震災に関してすでに発表してきた論文・報告書に加筆修正したものからなる。また書の前半は、阪神淡路大震災を契機にしてどのように法制度が変化してきたか、そして現状ではどのような法制度が重要なものかの基的な災害対応の説明が詳細に書かれていて、たぶんかなり読み手のハードルを高くしてしまっている。もちろん実際に政策ベースで考えるとこの日の災害関係の法制度をよく知っておかないとまずいのでそれはそれで貴重な貢献になっている。 とりあえず、このでいま僕の一番の関心は最後部にある第11章と12章である。僕は今回の大震災に関連する被害額の推計については、林氏のものを支持してきた(直接的な人的被害を含めた約3

  • 鈴木亘『年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本対策』

    鈴木さんから頂戴しました。ありがとうございます。群馬から帰る電車の中で一気に読めました。鈴木さんの従来の主張が、さらにわかりやすく、また直観的なイラストが多くの読者の助けになるでしょう。 年金問題は不安だし大事。だけど理解するのが難しい、とお感じの人はまずこのから読んだ方がいいでしょう。 まず厚労省やその周辺の官僚、研究者、政治家、評論家など「年金ムラ」の人たちは、「100年(以上)安心」であるといまの年金制度をほめたたえます。年金問題を批判して政権についた民主党は、まったくなんの抜的対策もしていないのに、100年(以上)安心を連発する無策ぶりです。 鈴木さんは厚労省など「年金ムラ」の人たちが主張するように、年金制度がまわっていないことを、具体的に数値で示します。例えば100年以上安心なはずの年金の積み立ては、デフレの継続、名目賃金率の伸び悩み、運用利回りの過大な想定値の反動などから、

    鈴木亘『年金問題は解決できる! 積立方式移行による抜本対策』
  • 「日本の核武装」の経済学メモ書き

    最近は当にネットも殺伐としているけど、なんでもテレビで核武装のアンケートの話もあったとか? 正直、やれやれ、というのが感想だ。 ただ前から興味はあったので一度、この問題を経済学の視点から考えてみたい。まあ、断定的な結論よりもとりあえずいろんな文献読んでのメモ書き、その第一弾。 最初は、まず服部彰氏のこの論説「核兵器開発の経済的帰結」 http://www.asiawide.or.jp/eps/symposium/s96/3-7.htm 服部氏の論説は96年のものであり、現在とは若干、国際政治情勢が異なるとはいえ、経済学的な部分はほぼいまでも有効な議論だろう。 論説の中核は後半部分だ。なぜ核兵器を保有するのかのインセンティブ。 「経済学の需要と供給という概念を使えばこの問題を解決できる。端的にいって、冷戦終結後の世界においては、需要面で、核を保有する政治的あるいは経済的価値が上昇し、供給面

    「日本の核武装」の経済学メモ書き
  • NHK取材班『生活保護3兆円の衝撃』

    生活保護の急増の主因を、区分でいうところの「その他の世帯」、その内実は働ける世代の失業者であることにまず書は注目している。また貧困ビジネスの実態、不正受給問題についての具体的な取材を積み重ねている。 書の最後では鈴木亘氏が総括的な発言を行っていて、現状の生活保護制度が「貧困の罠」として機能しやすいこと、また生活保護受給との関連で最低賃金の引き下げを提案している。鈴木氏の発言は、現状(失業の増加による生活保護受給者の増加)を前提にした上で、現在の制度では受け皿として限界があること、ムチとアメを十分利用して、入りやすく出やすい生活保護制度を再設計するべきだという提案だろう。もちろんこの現状の前提を変更することが別途重要な問題であることはいうまでもないと思う。 ちなみにデフレ不況の持続と生活保護受給者の増加との関連は片岡剛士さんの資料、高橋洋一さんの論説を参照のこと。 高橋洋一「急にクローズ

    NHK取材班『生活保護3兆円の衝撃』
  • 学校選択制といじめ(メモ書き)

    松尾匡さんがホームページのエッセイで「学校選択制の外部性が大津いじめ事件を生んだ」http://t.co/UicP0sI9というものを書かれた。簡単にいうと市場の失敗としていじめをとらえている。 以下、抜粋。 学校選択制が事件の隠蔽をもたらしたのではないかということが書いてあります。 これはそのとおりだと思います。こんなふうに言うと、「教育には競争原理わぁ〜」とかの神学論争が始まるのかとお思いのかたもいらっしゃるでしょうけど、そんなこととは関係なくて、全くもって身もふたもない「経済学」の理屈でこれが言えるのです。 普通の商品で市場メカニズムがうまく働くのは、コストや便益が取引当事者にだけかかってくるからです。 取引当事者の外にまでコストや便益が及んでしまうことは、「外部性」と呼ばれ、これがあると市場メカニズムはうまく働かなくなります。例えば「公害」なんかが典型的例として言われます。 この「

    学校選択制といじめ(メモ書き)
  • 若田部昌澄「歴史としてのミルトン・フリードマン」

    経済学史研究』の最新刊に掲載。最新の経済学史研究は、アクター・ネットワーク理論が積極的に利用されている。経済学者たちの交流や交渉にしぼり、彼らの主張をアクター、概念、テクノロジーの連関から理解するものだ。このようなアクター・ネットワーク理論の光の中で、従来の「シカゴ学派」「新自由主義者」「市場原理主義者」などとレッテル貼りされてきたフリードマン像がどのように変貌していくのか、そのような観点も踏まえながら若田部論説は最近のフリードマン解釈を手際よく整理している。 このアクター・ネットワーク理論的な観点から、フリードマンの属した「複数の歴史的文脈と知的ネットワーク」を、この論説では6つの局面で明らかにしている。1)20世紀後半の経済科学、2)全米経済研究所(NBER)の研究伝統、3)シカゴ学派の研究伝統、4)貨幣・景気循環理論からマクロ経済学へ至る経済理論史、5)パブリック・インテレクチュア

    若田部昌澄「歴史としてのミルトン・フリードマン」
  • 東京電力の天下りの経済的損失

    東京電力は戦時中に、戦時体制に備えて政府がコントロールしやすいという名目で地域ごとにいくつかの独占事業体を構築する中で生まれた。独占事業体の特徴というのは、簡単にいうと消費者にとってムダが発生しやすいことだ。例えば電気料金は、自由競争のケースに比べて、割高になる。なのでいろんな仕組みで、政府は独占的な電力会社の電気料金を制御していくことになる。ただしどうしても完全に行われることが難しい。 そこで独占事業体の多くにはムダがわりと広範に観察できる。東京電力もその例のひとつのようである。東京都副知事でまた作家の猪瀬直樹さんは、東京電力の「天下り」を指摘し、そこにムダが発生している事実を追求している(「東京電力「天下り全リスト」公開『週刊文春』4月26日号」。この記事は、道路公団民営化やまた『日国の研究』などで特殊法人の暗部にいち早く、そして最も深く切り込んだ猪瀬さんらしい徹底した取材である。資

  • 通貨スワップについてのリンク集

    なんか韓国との領土問題で、「日韓スワップ協定破棄して経済制裁」とか、あたかも中央銀行(日は財務省も関与)間の通貨スワップが、ゼロサム的なゲームかなんかで、日が一方的に韓国に恩恵与えてそれで通貨スワップ離脱すれば韓国にだけ損失、みたいな政治的な熱狂に促された発想が蔓延している。 まあ、そういうゼロサム的な熱狂的な発想はよく理解できないので、以下は備忘録も兼ねて中銀間の通貨スワップに関するリンク先を紹介。 1.中央銀行の通貨スワップの目的や仕組みについてはFRBのサイトが詳しい。 http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/bst_liquidityswaps.htm (ドル目線からだが他の通貨間でも基同じ) 2.よくある質問へのお答えコーナー http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/bst_

    通貨スワップについてのリンク集
  • 現在の本当の「消費税率」は20%超ではないのか?

    消費税増税論議がこれからまたヒートしていくだろう。さて今日は講義の前の準備で、久しぶりに岡田靖さんと飯田泰之さんとの対談を再読した。芹沢一也&荻上チキさんたちの編集になる『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社)に収録されているおふたりの対談である。 この対談は、日経済の大きさを測る尺度としてのGDPの簡単な解説からはじまり、その変化率(つまりは経済成長率)、経済成長が現在および過去の日経済に持つ意味が実に面白く語られている。 そのなかで先進国はだいたい毎年、2%〜2.5%ぐらい実質GDPが成長するのは当たり前という発言がある。僕もそう思う。この背景には、だいたい毎年自然と学習効果などが作用して、それくらいの成長トレンドがあるということである。 岡田:GDPの増え方を見ると、先進国では、長期的に年2%から2.5%ぐらい、一人当たり生産額は増え続けています。どうも、人間の知識の蓄積し

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  • アメリカ合衆国戦略爆撃調査団『日本戦争経済の崩壊』と内閣総力戦研究所・秋丸機関の話題

    Twitterで数日前に書いたものを簡単にまとめました。 アメリカ合衆国戦略爆撃調査団『日戦争経済の崩壊』は、経済学者のガルブレイスも入った終戦直後に行われた米国の日に対する戦略爆撃の効果についての調査。 精密爆撃(いまで言うピンポイント爆撃)は終戦を早める効果に乏しく、反対に無差別爆撃の効果とその正当性をうたってる。しかもこの『日戦争経済の崩壊』(米国戦略爆撃調査団)では、その都市部への無差別爆撃の方が、(自国の上陸部隊支援などを目的とする)精密爆撃よりも、終戦効果が大きいかを、たぶん日経済に対する最初の格的なGDP統計的手法で分析してる。 この手法を参考にしたのが翌年の第一回の経済白書ではないか。他方で、この報告書を読むと、大規模な無差別爆撃よりも、鉄道を中心とした精密爆撃がより効果的であるとも読める記述があり、そこは矛盾しているような印象だ。ちなみにこの報告書には戦中に、米

    アメリカ合衆国戦略爆撃調査団『日本戦争経済の崩壊』と内閣総力戦研究所・秋丸機関の話題
  • 財政政策をめぐる雑感

    以下はTwitterでつぶやいたものをベースに少し雑談調のエントリー。 一時的な財政政策と恒久的な財政政策の違いがわからないと、僕がチャンネル桜の座談会で「自民党ぽい国土強靭化計画反対、でも恒久化財政政策ならいい」といっていた意味が理解できないと思う。たまたま新しいアニメを検索したら、僕のこの発言への誤解と誤読も甚だしい匿名素人さんのエントリーをみつけた。どうも何も理解していないようだけど。 さらに恒久的な財政政策と同時に、整備新幹線のような明らかに非効率的なものへの投資を批判するのも両立できないとそのリンク先ではみなしている。これも当にわかってないんだなあ、と思う。 ちょっとだけ紹介するけど、啓蒙書レベルだと、一時的財政政策がダメなのを直観レベルで書いたのは小林慶一郎他の『日経済の罠』(日経文庫)。恒久的な財政政策については、バーナンキの『リフレと金融政策』。また両方を体系的に説明し

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