人間らしさと人工物っぽさのちょうどいい具合の中間を「不気味の谷」というらしいが、この本は、"この人ヤバくね? 頭おかしくね?" というのと、"すごいな…熱いし真剣に研究してるんだな…"っていうのの、ちょうど中間にハマって妙にぞわぞわくる不気味な本だった。「狂気に満ちた最高のエッセイ」と評している人がいたが、その言葉がドンピシャだ。 簡単に言うと、昆虫博士を目指したある若き博士の就職奮闘記である。 というと面接受けたり論文提出したりという話かと思うだろうが、なにしろ舞台の大半がアフリカのモーリタニア。著者の研究は、サハラの周辺に位置するサヘル地帯(緑がちょっとだけある)に大発生するサバクトビバッタなのだ。バッタが大発生して作物を食い荒らすと当然、飢饉が発生する。とっとと退治しなくてはならない。だが、発生メカニズムや生態が良く分からないのでは退治も大変だ。ていうかそもそもバッタの大群なんて発生