確か、高校一年生の頃だったと思う。当時から読書好きだった私は、普段は詩や小説ばかりを読んでいたのだが、そろそろ、哲学書というものを読んでみたくなって、さて何から読もうかと、持っていた岩波文庫の後ろペイジを捲ってみた。今のようにネットで検索するということの出来ない時代だったから、私はこのラインナップの紹介ペイジから、よくタイトルに惹かれて本を買いに行ったものだった。 この時私の目に留まったのは、ヘーゲルの『哲学入門』だった。これはまさにピッタリのタイトルではないか。ヘーゲルについては、倫理の授業で習ったくらいだったが、とにかく大哲学者らしいというので、私は、「オレはこれからヘーゲルの本を読むのか」と、ちょっとした興奮を覚えながら書店に足を運んだ。 実家の近くのそこそこの規模の書店だった。文庫の棚に足を運ぶと、残念ながら、『哲学入門』は見つからなかった。私は仕方なくレジに行って、二十代半ばくら