足がすくむほどの険しい渓谷に、木造の橋が威風堂々と架かっている。つり橋ではない。かといって橋脚も見当たらない。両岸の岩場からせり出した角材を覆う屋根が独特の景観を演出する。 山梨県大月市の「猿橋(さるはし)」は甲州街道(国道20号)沿いを流れる桂川に架かる。長さ31メートル、幅3・3メートル、高さは31メートル。「錦帯橋(きんたいきょう)」(山口県岩国市)などとともに日本三大奇橋の一つにあげる人が多い。■動画はこちら この橋の特徴は木造家屋でも使われる桔木(はねぎ)という技術を取り入れた構造にある。両岸壁に開けられた横穴に計16本(4段、各2本)の角材を打ち込み、その上に乗せられた橋げたをてこの原理で支えている。くぎは使われていない。 江戸時代には同様の造りで奇橋といわれた「木曽の棧(かけはし)」(長野県上松町)、「愛本刎橋(はねばし)」(富山県黒部市)などがあったが、今はない。 大月市郷