尾関章*1「清張×原武史=鉄道の妙という話」http://book.asahi.com/reviews/column/2013050700005.html *2 原武史編『松本清張傑作選 時刻表を殺意が走る 原武史オリジナルセレクション』という本の紹介なのだが、松本清張とは関係のない書き出しの部分; ずっと、ずっと昔のことだ。僕は「三等車」のなかで、初めての「まちで見かけた有名人」体験をした。ぱっちりとした目、きらびやかな衣装。まるでフランス人形のような、という言葉がぴったりの子役タレントと居合わせたのだ。 昭和30年代、東海道本線の鈍行だったと思う。大混雑していた。彼女がどこかの駅で乗り込んでくると、車内にどよめきが起こった。付き添いの人に守られて乗客をかきわけるように進み、僕の家族が座るあたりに近づいてきた。そして、席を詰めた僕の隣にちょこんと腰かけたように記憶している。三等車の硬い背