(前回から読む) 政治の舵取りを誤った寺内内閣を大阪朝日新聞は激しく糾弾した。そのとばっちりを食った鈴木商店は、米価高騰への民衆の怒りを浴び、「米騒動」で焼き打ちされた。米の値段を釣り上げた買占めの元凶は鈴木商店ではなかったにもかかわらず……。 この焼き打ちによって、金子が心血を注いだ「日米船鉄交換交渉」の契約書類や目論見書(第12回「鉄飢饉を救った『日米船鉄交換契約』」)はすべて焼失し、その実行が遅れた。追い討ちをかけるように第一次大戦の休戦協定が結ばれ、海運界は一転、不況に陥った。鈴木の大商いを支えた船が余ってしまったのだ。 大戦が始まった1914年、世界の船腹総量は約4900万総トンで、イギリス本国とその植民地が2103万トンと四割以上を占めて第一位。続いてドイツが546万トン、米国が532万トン、以下、ノルウェー、フランスときて、第六位の日本は170万トンにすぎなかった。 それが、